
NTTグループが、組織の側から社員へ直接声をかける人事制度「NTT Group Job Scout」を始める。対象はグループ66社・約10万人だ。
転職サイトで当たり前になった「スカウト」が、連結34万人規模の企業グループの社内異動に持ち込まれる。
この動きは、HR業界から見ると「人材を探す市場」が社外だけでなく社内にも広がり始めたことを示すニュースとして読める。
出典
- NTT株式会社 ニュースリリース「NTTグループ、オファー型人事制度『NTT Group Job Scout』を開始」(2026年10月22日)
- 株式会社ビズリーチ プレスリリース「NTTグループが『社内版ビズリーチ by HRMOS』を導入」(2026年10月22日)
- 株式会社ビズリーチ「HRMOS、『社内版ビズリーチ』を8月上旬より提供」(2024年7月10日)
この記事の要点
- 社内公募(社員が手を挙げる)に、組織が社員を探してオファーする仕組みを足した
- スカウトを成り立たせているのは、グループ共通で整えたスキルデータの基盤
- 社内でも組織が『選ばれる側』になり、転職市場向けのHRサービスが社内異動の市場に入ってきている
NTTグループとは
NTT株式会社を持株会社とする企業グループで、NTTドコモ、NTTデータ、NTT東日本・NTT西日本などを抱える。
事業は総合ICT、地域通信、グローバル・ソリューションなどにまたがり、連結の従業員数は344,196名(2026年3月31日時点)にのぼる。
人事制度の面では、管理職へのジョブ型人事制度の導入や、専門性を軸にした一般社員制度への見直しを進めてきた。
何が起きたか
NTTグループは2026年10月22日、オファー型人事制度「NTT Group Job Scout」を始めると発表した。
社員が登録したスキル・経験・キャリア志向をもとに、グループ各社・各組織が必要な人材へ直接オファーする仕組みだ。
対象は、グループ共通のタレントマネジメント基盤を使うNTTドコモグループ、NTTデータグループ、NTT東日本グループ、NTT西日本グループなど66社・約10万名。
運用の基盤には、株式会社ビズリーチの「社内版ビズリーチ by HRMOS」を使う。
背景にあるのは、2023年7月に始めた社内公募制度「NTT Group Job Board」だ。
社員が自ら社内の求人に応募する仕組みで、導入から3年間で約4,000件の応募と約2,100件の異動につながった。
NTTは発表の中で、少子高齢化による労働人口の減少と、AIやデジタル技術の進展で求められるスキルが急速に変わっていることを挙げ、既存社員の力を成長領域へつなげる必要性を説明している。
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公募だけでは届かない人がいる
社内公募は、社員が自分で求人を見つけ、手を挙げて初めて動く仕組みだ。
ビズリーチのプレスリリースは、この点を『社員が自身の可能性に気づいていない場合や応募に踏み出せない場合もある』と説明している。
約10万人という規模になると、どの組織にどんなスキルを持つ人がいるかは、本人が名乗り出ない限り見えにくい。
両社のリリースはいずれも、公募に『組織側からのアプローチ』を加えることを今回の制度の狙いに置いています。
Job Boardで約2,100件の異動が生まれた次の一手として、手を挙げていない人材にも届く経路を足した、と読めます。
スカウトの前提はスキルデータ
もうひとつ見落とせないのが、スカウトの土台になるデータの整備だ。
NTTグループは2026年7月から、SAPの「SAP SuccessFactors Talent Intelligence Hub」を人材データの共通基盤として使い始めている。
対象は国内主要会社の正社員約16万5,000人。
これまでは18の専門分野ごとに専門性を年1回チェックしていたが、新しい基盤では分野を細かく分け、職務ごとのスキルの習得状況を期中いつでも登録できるようにした。
転職サイトのスカウトが機能するのは、求職者のレジュメが検索できる形でそろっているからだ。
社内スカウトも同じで、組織が「この人に声をかけたい」と探せるだけのスキル情報がそろって初めて成り立つ。
NTTの場合、スキルデータの基盤(Talent Intelligence Hub)と、検索・オファーの仕組み(社内版ビズリーチ)を組み合わせた構成になっており、制度の新しさはスカウト機能そのものより、その前段のデータ整備にあるとも言えます。
組織も『選ばれる側』になる
NTTのリリースには、組織は必要な人材に直接アプローチできる一方で『社員から選ばれる存在となることも求められます』と書かれている。
各組織は、提供できる成長機会や挑戦環境、事業の魅力を磨くことになる。NTTは将来的に、グループ全体をひとつの「タレントマーケットプレイス」へ進化させるとしている。
これは、転職市場で企業同士が候補者を取り合う構図を、グループの中に再現する発想です。
HR業界から見ると、これまで社外の転職市場で使われてきたスカウト・レジュメ・求人票という道具立てが、大企業の社内異動という別の市場に持ち込まれ始めた一例と読めます。
実は「本人が異動を希望している人」だけが対象
制度の設計で押さえておきたいのが、利用条件だ。
NTTのリリースによれば、制度を使うには社員自らが所属組織からの異動を希望していることや、入社3年が経過していることなどの条件がある。
ビズリーチ側の説明でも、社員はまず「異動希望情報および制度利用希望」を登録し、組織はその情報をもとに候補者を検索してスカウトを送る流れになっている。
組織が全社員の中から自由に引き抜けるわけではなく、本人が『声をかけてもらってよい』と意思表示した人だけが対象になる。
転職サイトにレジュメを登録した人にだけスカウトが届くのと同じ構造で、社員の意思を起点にした仕組みになっている点は、制度の性格を読むうえで大事なポイントです。
関連動向:「社内版ビズリーチ」が狙う市場
社内版ビズリーチは、2024年8月にビズリーチの「HRMOSタレントマネジメント」の機能として正式提供が始まった。
転職サイト「ビズリーチ」で培った検索・マッチングの技術を社内の異動・登用に応用したもので、生成AIで社員の「社内レジュメ」や「社内ポジション要件」を作り、マッチ度の高い社員を検索できる。
ビズリーチは同サービスを『社内スカウトで人材流出を防ぐ』と打ち出している。
転職市場の活性化で人材流出が経営課題になるなか、社内にもキャリアの選択肢を用意し、社員が働き続けたくなる会社をつくる、という位置づけだ。
転職市場をつくってきた事業者が、同じ技術で「社外に出る前に社内で出会う」市場にも製品を広げている構図で、66社・約10万人を対象にする今回のNTTグループの導入は、その流れの中に位置づく事例と言えます。
ビズリーチのHRMOSシリーズの動きは、ATSで先頭に立ったHRMOS採用──ビズリーチが投資を緩めない理由でも取り上げている。
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「HRMOS採用、面接評価から別の求人を提案するAI」 ビズリーチは2026年10月20日、採用管理システム「HRMOS採用」の「AI求人提案アシスト」機能を10月13日から提供していると発表した。 候補者のレジュメに加え、面接官の評価コメントまでAIが解析し、マッチ度の高い社内の求人を推奨理由つきで1〜2分で示すという。背景には、他ポジションの案内や求人選びが担当者の経験や主観に頼る「属人化」があるとする。 別ポジションへの打診は、社内の求人をどれだけ知っているかで担当者ごとに差が出やすかった。 打診先を探す手間と判断のばらつきが減れば、1人の応募者を、複数の求人で検討する動きは、企業側で増えやすくなると読める。 候補者を集めるだけでなく、集まった候補者を社内のどの求人に結びつけるかまでATSが支える範囲に入ってきたとも読める。 #HR #HRテック #ATS #採用管理システム #中途採用 #ビズリーチ #HRMOS

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