ATSで先頭に立ったHRMOS採用──ビズリーチが投資を緩めない理由

ATSで先頭に立ったHRMOS採用──ビズリーチが投資を緩めない理由

目次

株式会社ビズリーチの採用管理システム『HRMOS採用』が、調査会社の市場調査で累計導入社数・売上シェアともにNo.1を獲得したと発表されました。

その1年前、ビズリーチは大手企業の新卒採用を中心にATS『sonar ATS』を展開するThinkings株式会社を買収し、2026年4月からはテレビCMも始めています。

先頭に立ったいまも営業損失を見込んで投資を続ける動きを追うと、ビズリーチがATSを人事データの入口として重く見ていることが見えてきます。

出典

この記事の要点

  • HRMOS採用が、有償ATS主要13社を対象とした調査で累計導入社数・売上シェアともにNo.1とされた
  • 株式会社ビズリーチが2025年10月、sonar ATSを展開するThinkings株式会社を約140億円で買収。親会社のビジョナル株式会社は、採用管理を外部と内部の労働市場の結節点と位置づけている
  • HRMOS事業はテレビCMなどで投資を拡大し、少なくとも今後2年間は営業損失の継続を見通す

ビズリーチとは

株式会社ビズリーチは、ビジョナル株式会社(東証プライム)の100%子会社です。2009年4月から転職サイト『ビズリーチ』を運営し、Visionalグループの中でHR Techのプラットフォーム・SaaS事業を担っています。

主なサービスは、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト『ビズリーチ』、人財活用プラットフォーム『HRMOS(ハーモス)』シリーズ、OB/OG訪問ネットワークサービス『ビズリーチ・キャンパス』、社内スカウトの『社内版ビズリーチ by HRMOS』です。

ビジョナルの2026年7月期の連結売上高は993.0億円(前期比+23.9%)。そのうち転職サイト『ビズリーチ』を中心とするBizReach事業が801.2億円、HRMOS事業が92.8億円です。

何が起きたか

株式会社ビズリーチは2026年10月8日、採用管理システム『HRMOS採用』が、株式会社日本マーケティングリサーチ機構の『採用管理システムに関する市場調査』(2026年9月)で、累計導入社数・売上シェアともにNo.1を獲得したと発表しました。

調査の対象は、有償の採用管理システム主要13社です。注記によると、2つの項目は次のように数えられています。

項目数え方(リリースの注記より)
累計導入社数2016年6月〜2026年8月に有償契約を締結した企業の総数。解約企業も含む
売上シェア各社への取材と推計に基づく。推計売上高は『アクティブ契約社数×主要契約プランの年額料金』で算出

具体的な導入社数やシェアの数値は、リリースには記載されていません。

HRMOS採用は、求人管理・応募者管理・面接日程調整などの採用工程を一元管理するATS(採用管理システム)です。初めて使う担当者や面接官でも操作しやすい設計、従業員規模や採用規模が変わっても使い続けられる点、ビズリーチのノウハウを搭載したAI機能を特徴に挙げています。

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トラキャリの視点:先頭に立っても、ビズリーチはATSへの投資を緩めない

2025年10月、もう1つのATSを買った

ビズリーチは2025年10月1日、採用管理システム『sonar ATS』を提供するThinkings株式会社の全株式を取得しました。取得価額はアドバイザリー費用等を含めて概算で140億1,000万円です。

sonar ATSは2012年にサービスを開始し、大手企業の新卒採用領域を中心に顧客基盤を築いてきたATSで、現在は『sonar ATS by HRMOS』としてHRMOSシリーズに加わっています。

ビジョナルは取得の理由として、グループが『中小・中堅企業から大企業の新卒及び中途採用領域の採用管理クラウドサービスのマーケットリーダーとしての地位を強固なものと』すること(同社推計に基づく)を挙げています。

ビズリーチ連携から出発したHRMOS採用と、大手の新卒採用に強いsonar ATS。グループとしては、企業規模も新卒・中途も横断して採用管理を押さえにいく布陣です。

採用管理は社外と社内をつなぐ結節点

この買収の開示文で、ビジョナルは採用管理領域を『外部労働市場と内部労働市場の結節点となる領域』と表現し、『採用管理システムの戦略的重要性は、今後当社グループにとってますます高まる』としています。

外部労働市場は転職サイト『ビズリーチ』が、内部労働市場は『HRMOSタレントマネジメント』や『社内版ビズリーチ by HRMOS』が、それぞれデータを持っています。その間で、応募から入社までの情報が通るのが採用管理システムです。

売上は伸び、それでも投資を積み増す

ビジョナルの2026年7月期決算では、HRMOS事業の売上高が92.8億円(前期比+78.2%)、期末のARRが103.3億円でした。この売上にはsonar ATS by HRMOSが10ヵ月分連結されており、伸び率には買収分が含まれます。

HRMOS事業は2Q時点で黒字化したのち、2026年4月からテレビCMやオンラインを含むマーケティング施策を始めました。

2027年7月期は売上高126.0億円を見通す一方、成長投資を加速し、15.0億円程度の営業損失(管理部門経費配賦前)を見込んでいます。決算発表FAQでは、2027年7月期を含む3年間は積極的な投資を続ける計画で、少なくとも今後2年間は営業損失が続く見通しだと説明しています。

ATSは、人事データの入口

2026年6月のリリースによると、HRMOSシリーズは2016年6月の『HRMOS採用』の提供からスタートしました。その後、シリーズは次のように広がっています。

  • 2019年:『HRMOSタレントマネジメント』
  • 2022年:『HRMOS勤怠』『HRMOS経費』
  • 2024年:『HRMOS労務給与』(HRMOS採用と連携し、入社者情報の転記ミスやタスク漏れを防ぐ)
  • 2025年:『社内版ビズリーチ by HRMOS』、『sonar ATS by HRMOS』の仲間入り

シリーズの累計導入企業数は12万社を超えています(2026年2月末時点)。

採用管理で入った応募者の情報は、入社後は労務給与やタレントマネジメントへと引き継がれていきます。ATSで先頭に立ったいまも買収・広告・赤字覚悟の投資を緩めていない点から、ビズリーチはATSを人事データの入口として重く見ていると読めます。

関連動向:開示されるKPIはHRMOS全体の合算

決算で開示されるHRMOSのKPI(ARR・利用中企業数など)は、2026年7月期から全てのHRMOS関連サービス(sonar ATS by HRMOSを含む)の合算です。HRMOS採用単体の導入社数や売上は開示されていません。

HRMOS事業の損益の推移と投資判断は、HRMOSが黒字化の直後に投資へ踏み込んだ理由──損失縮小の4年とBizReachとの接続で詳しく読み解いています。

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