HRMOSが黒字化の直後に投資へ踏み込んだ理由──損失縮小の4年とBizReachとの接続

HRMOSが黒字化の直後に投資へ踏み込んだ理由──損失縮小の4年とBizReachとの接続

目次

ビジョナルのHR Techサービス『HRMOS』は、通期で売上高92.8億円(前年比+78.2%)まで伸びました。

その一方で、損失を4年かけて縮め、黒字化に届いた直後に、あえて投資を広げて再び営業損失を選んでいます。

数字の推移と経営陣の説明から、HRMOSがいまどの段階にあり、何を目指しているのかを読み解きます。

出典

この記事の要点

  • HRMOSの営業損失は約30億円から4.8億円まで縮小し、2Qに黒字化。その後、テレビCMなどで投資を広げた
  • 2027年7月期は15.0億円程度の損失を見込み、少なくとも2年は営業損失が続く計画
  • 投資の先にあるのは、社内の人材データとBizReachの労働市場データをつなぐ『経営プラットフォーム』構想

ビジョナルとは

ビジョナル株式会社は、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト『BizReach』を中核とするグループの持株会社です。BizReachは2009年4月にローンチし、ダイレクトリクルーティングという採用手法を広げてきました。

2026年7月期の連結売上高は993.0億円(前年比+23.9%)で、そのうちBizReach事業が801.2億円と約8割を占めます。BizReachの営業利益率(管理部門経費配賦前)は41.3%です。

HRMOSは、採用管理・人財活用・勤怠管理・経費精算・労務給与などのシステムをシリーズで展開する、BizReachに次ぐHR Techの柱です。

何が起きたか

ビジョナルが2026年9月に発表した2026年7月期決算で、HRMOSの売上高は92.8億円(前年比+78.2%)、期末のARR(年間経常収益)は103.3億円、利用中企業数は10,699社でした。

この伸びには、2025年10月にグループインしたThinkings株式会社の『sonar ATS by HRMOS』が10ヵ月分連結されています。

損益面では、2Q時点で黒字化を実現したのち成長投資を拡大し、通期の営業損失(管理部門経費配賦前)は4.8億円、4Q単独では4.4億円の損失でした。

2027年7月期の見通しは、売上高126.0億円(+35.6%)、営業損失15.0億円程度です。

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トラキャリの視点:黒字化は『ゴール』ではなく『確認』だった

4年かけて損失を縮めてきた事業

HRMOSの通期営業損失(管理部門経費配賦前)は、資料で次のように推移しています。

期営業損失
2022年7月期29.5億円
2023年7月期17.4億円
2024年7月期10.2億円
2025年7月期7.7億円
2026年7月期4.8億円

2026年7月期の2Q累計では、0.3億円の黒字に転じています。

毎年着実に赤字幅を縮め、事業単体で利益が出る水準まで到達した。そのうえで、下期に投資へ踏み込んだという順序です。

なぜ黒字化の直後に投資を広げたのか

決算発表の書き起こしでは、「プロダクトの開発状況や市場環境に基づき、FY2026/7下期は成長投資に資するタイミングであると判断」し、4Qを中心にマーケティング投資を加速させたと説明されています。

その結果として「商談数の増加等ポジティブな結果が見られた」ことが、来期の投資拡大の根拠に挙げられています。

2026年4月からはテレビCMやオンラインを含む各種マーケティング施策を開始しました。2027年7月期を含む3年間は積極的な投資を計画し、プロダクト開発に加えて、人材採用を伴う営業活動の強化やマーケティング活動の拡充を行うとしています。

黒字化は事業として利益を出せることの『確認』であり、そこから先は投資で成長を取りにいく段階に入った、と読めます。

グループ全体の方針としても、資料には「成長を続けるBizReachの安定した利益を基盤に、グループとして積極的に成長投資の実行とM&Aの活用を目指す」と記されています。

ARR+177%は、数え方の変化も含む

ARRは前年比+177.0%、利用中企業数は+341.9%と大きく伸びています。

ただ資料では、2026年7月期からKPIを全てのHRMOS関連サービスを含む形に変えたこと、また利用中企業数とARPUの水準変化は「幅広い規模の顧客層を持つHRMOS勤怠が合算された影響」であることが明記されています。

事業の勢いを測るなら、会社が「M&Aの影響前のFY2025/7と同水準の成長率」と説明する来期の売上成長率+35.6%のほうが、目安になりそうです。

投資の先にある構想:社内データと労働市場データをつなぐ

決算説明会で南社長は、HRMOSの方向性を具体的に語っています。

まず、目標設定や評価のデータとBizReach AIを掛け合わせ、社員のレジュメと社内ポジションの要件を自動で可視化する。そのうえで、どの社員がどのポジションに適しているかをレコメンドし、人の配置判断を支援する。現在は『社内版ビズリーチ by HRMOS』がこの機能を担っています。

さらに、スキルのギャップを埋める教育・育成の新サービスとして『HRMOS ラーニング』を挙げました。

そして社内に適任者がいないときに、同じデータ構造を持つBizReachから社外の人材をレコメンドする。南社長は「HRMOSが蓄積する『社内にしかない固有のデータ』と、BizReachのみが持つ『独自の労働市場のデータ』」を組み合わせた「唯一無二の経営プラットフォーム」を目指すとしています。

外部採用から始まったBizReachの知見を、社内の配置・育成へ広げ、再び採用へつなぐ。HRMOSへの投資は、ビジョナルの事業を『採用』から『人材活用全体』へ広げるための投資と捉えると、損失を見込んでまで踏み込む理由が見えてきます。

BizReachの会社概要はビズリーチの会社概要を徹底解説!事業内容、企業文化、オフィス環境まででもまとめています。

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