エクサウィザーズ、イオンで『経営幹部候補の見立て』まで任されたHR Techの現在地

エクサウィザーズ、イオンで『経営幹部候補の見立て』まで任されたHR Techの現在地

2026年10月14日ニュースを読む
目次

株式会社エクサウィザーズが、イオン株式会社の次世代経営幹部候補の可視化・育成を支援していると発表した。

生成AIツールの導入、デジタル人材の発掘と段階を踏んできた取引先で、人材開発の中核にあたる『経営幹部の見立て』まで任された形だ。

前期に減収となったHR Tech領域が、どこへ向かおうとしているのかを読む材料になる。

出典

この記事の要点

  • イオンとの取引は、生成AIの全社導入→約7,000名のDXアセスメント→経営幹部候補の育成と、段階的に深まってきた
  • HR Techは前期に約1割の減収となり、AIプロダクト事業の中で唯一マイナスの区分だった
  • 会社は『AX人材育成』への転換を掲げており、今回の案件はその打ち出しと重なる

エクサウィザーズとは

株式会社エクサウィザーズは、2016年2月設立、東証グロース上場のAI企業だ。

事業は、自社開発のAIプロダクトを提供する『AIプロダクト事業』と、企業ごとにAIの導入・開発を支援する『AIソリューションサービス事業』の2本柱で構成される。

2026年3月期の連結売上高は119億96百万円(前期比22.3%増)、営業利益は15億94百万円で、前期の23百万円から大きく伸ばした。2027年3月期は売上高156億円、営業利益23億円を見込む。

AIプロダクト事業の中には、法人向け生成AIツール『エクサベース AI』などの生成AIプロダクト群に加え、人事向けの『HR Tech』、営業向けの『Sales Tech』、ヘルスケア領域のプロダクトがある。今回の案件で訓練に使われるAIロールプレイング『エクサベース ロープレ』は、営業向けの区分に属するプロダクトだ。

何が起きたか

エクサウィザーズは2026年9月18日、イオンの次世代経営幹部候補の可視化・育成を2026年2月から支援していると発表した。

背景にあるのは、イオングループが2030年度に向けた中長期経営計画のもとで進める事業ポートフォリオの変革だ。事業の変化に合わせて、人材の見立てと育成を組み替えていく必要があるとしている。

仕組みの軸は、イオンが創業以来の経営理念・行動原則を体系化した『経営知見(Regulus)』だ。この行動原則の一つひとつにDIAの項目を紐づけ、候補者の体現度を判定根拠付きで可視化する。

DIA(Digital Innovator Assessment)は、エクサウィザーズが提供する人材アセスメント(能力診断)だ。経済産業省と情報処理推進機構(IPA)が策定した『デジタルスキル標準』に準拠し、DXリテラシーとDX推進スキルを横断的に測る。DX人材の測定に使われてきた診断を、今回はイオンの行動原則と組み合わせて経営幹部候補の判定に使う形だ。

育成段階では、イオンの経営理念を反映したAIアバターとの対話訓練(エクサベース ロープレ)と、研修の成果発表を同じ基準で評価する仕組みを組み合わせる。見極めと訓練の両方を、同じ経営理念・行動原則で測る設計になっている。

役割分担については『決めるのは人であり、AIが担うのは同一基準で材料をそろえ、その根拠までたどれる記録を残すこと』と明記した。

あなたにあった
「これからが、おもしろい企業」
一緒に探しませんか?

無料でオンライン30分キャリア面談を申し込む

トラキャリの視点:『測る相手』が現場から経営幹部候補へ

イオンとの取引は3段階で深まっている

今回のリリースは、イオンとの取引の積み重ねの上にある。

最初は生成AIの全社導入だ。イオンデジタルアカデミーが『exaBase 生成AI』を採用し、グループ全業態90社・約1,000人で利用を始めた。

次がデジタル人材の発掘だ。同社の導入事例によると、イオンは中期経営計画で掲げた『デジタルシフトの加速と進化』に向けて、約7,000名がDXアセスメントを受検している。

そして今回、支援の範囲を人材育成戦略全体へ広げ、経営幹部候補の見立てに入った。

ツールの導入から入り、社員のスキル測定へ、さらに経営層の候補選びへと、測る対象が『広く浅く』から『少数の重要人材』へ移っている。

HR Techは前期、唯一の減収区分だった

この案件をHR Tech事業の数字と並べると、もう一段解像度が上がる。

2026年3月期のAIプロダクト事業は売上高49億16百万円(前期比60.9%増)と大きく伸びた。その内訳で、生成AIプロダクト群は31億72百万円(同112.4%増)と倍増した一方、DXアセスメントなどを含む『人事: HR Tech』は9億99百万円(同10.4%減)と、区分の中で唯一の減収だった。

足元の2027年3月期第1四半期も、HR Techは2億70百万円と前年同期(3億1百万円)を下回る。ただし四半期ごとに見ると、前期の第3四半期(1億84百万円)を底に、第4四半期2億42百万円、今期第1四半期2億70百万円と持ち直している。

会社は決算説明会で、HR系サービスについて『次の四半期においては過去最高の売上高になることを見込んでいます』と述べている。

『DX人材の測定』から『AX人材育成』へ

会社が掲げているのは、DXアセスメント中心のサービスから『AX人材育成』への転換だ。AX人材育成は『測る→育てる→活かす』の3ステップで、継続的な人材育成と組織変革を支援するサービスとして打ち出されている。

イオンの案件は、この3ステップがそのまま入った構成になっている。

  • 測る:経営知見×DIAによる体現度の可視化
  • 育てる:AIロープレと成果発表レビューによる訓練
  • 活かす:同じ基準で訓練前後を比べ、本人へフィードバック

DXアセスメントが多くの社員を対象に現状を測るものだとすれば、経営幹部候補の育成は対象人数こそ限られるものの、企業の人材戦略の中核に入り込む仕事だ。HRコンサルティングとAIを組み合わせた『包括的なパートナー』として伴走すると明記している点からも、1社との関係を深くしていく方向が読み取れる。

もっとも、今回の案件が業績にどの程度寄与するかは開示されていない。現時点で言えるのは、HR Techの打ち出しと実際の案件の中身が揃ってきた、というところまでだ。

関連動向:DIAを『選抜』に使う動きが広がる

DIAを人材の選抜に使う事例は、イオン以外にも出てきている。

2027年3月期第1四半期の決算説明資料では、テクノプロ・ホールディングスとAX人材育成に関する戦略的提携の基本合意を締結したことが示された。約半年間の育成プログラムの参加者をDIAを活用して選抜し、修了者の約8割を目安にエクサウィザーズのAI開発案件へ参画させる計画だ。将来的には、テクノプロの約30,000名のエンジニアをAX人材として育成することも視野に入れるとしている。

経営幹部候補の見立てと、エンジニアの育成対象の選抜。対象は異なるが、どちらも『誰を育てるか』を決める入口にアセスメントを置く使い方だ。

アセスメントの用途が『現状を知る』から『選んで育てる』へ広がっていく中で、HR Techの売上が会社の見通しどおり過去最高に届くかは、次の決算の確認ポイントになる。

SNSでHR業界の情報発信中

無料でオンライン30分