
HERP Careerがエージェントサービスを始めた理由——AIマッチングの『その後』を人で埋める
株式会社HERPが、求人メディア『HERP Career』でエージェント(人材紹介)サービスを始めました。
採用管理システムから出発したHERPが、求職者の選考に人が伴走する役割まで自ら担うのは、事業の重心が一段動いたことを示します。
鍵は『面談リクエスト』と『HERP Agent Network』という2つの既存の仕組みが、今回どうつながったかにあります。
出典
- 株式会社HERP「『HERP Career』がエージェントサービスを開始」(2026年10月20日・PR TIMES)
- 株式会社HERP「【HERP Career】AIがマッチ度の高い企業からの面談オファーを届ける新機能を提供開始」(2026年3月19日・PR TIMES)
- 株式会社HERP「ATSと連携し、求人をワンクリックで出稿できる『HERP Agent Network』を提供開始」(2026年4月22日・PR TIMES)
この記事の要点
- HERP Careerは、AIが企業と求職者を引き合わせる『面談リクエスト』の後工程に、HERP自身のエージェントを置いた。
- 3月に『選考支援機能の実装も予定』としていた方向が、人によるサポートという形で具体化したとも読める。
- 企業向けに始めた『HERP Agent Network』が、今後は求職者の供給源にもなり、HERPの各事業が一本の流れでつながりつつある。
HERPとは
株式会社HERPは2017年3月設立、東京都品川区に本社を置く未上場のHRTech企業です(代表取締役・庄田一郎氏)。
中核は採用管理システム(ATS)の『HERP Hire』です。そこからタレントプールの『HERP Nurture』、リファレンスチェックの『HERP Trust』、求人メディアの『HERP Career』、人材紹介会社向けの『ジョブミル』と『HERP Agent Network』、採用コンサルティングへと事業を広げてきました。
『HERP Career』は、IT・デジタル領域を中心に3万件以上の求人を扱う求人プラットフォームです。同社はここを『スタートアップ求人数No.1』(日本マーケティングリサーチ機構の調査による)と打ち出しています。
何が起きたか
HERPは2026年10月20日、『HERP Career』でエージェント(人材紹介)サービスを開始したと発表しました。
あわせてコンセプトを『あなたの挑戦に、ふさわしい仕事を。』に改め、求職者が求人メディアとエージェントを使い分けられるサービスへと体験を刷新しています。
変化の中心は『面談リクエスト』(旧・面談オファー)です。HERPが求人にマッチする求職者を企業に提案し、企業がリクエストを送り、求職者が承認すればカジュアル面談か面接に進む、という機能です。
これまでは、マッチした企業と求職者がその後のやりとりを直接行う必要がありました。今後はHERPのエージェントが双方の間に入り、日程調整や選考プロセスをサポートします。
さらに企業向けには、『面談リクエスト』で提案される求職者を、『HERP Agent Network』を利用するエージェントに登録している求職者にまで広げるとしています。こちらは「近日中に実装予定」とされています。対象は、『HERP Career』に求人を掲載し応募を受け付けている企業です。
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トラキャリの視点:AIマッチングの『その後』を、人で埋めにきた
今回の動きは、3月のリリースと並べると輪郭がはっきりします。
3月にHERPは、AIが求職者のプロフィールを分析し、マッチ度の高い企業から面談オファーが届く機能を『HERP Career』に入れました。『HERP Hire』に蓄積した「どのような経歴の求職者が、どの企業の選考を通過しているか」という採用実績データを使い、約3万件の求人から合う企業を選ぶ仕組みです。
同じリリースの『今後の予定』には、「求職者向けに、選考支援機能の実装も予定しています」と書かれていました。
それから7カ月後に出てきたのは、システムの機能ではなく、HERPのエージェントが選考に伴走する形でした。両者の関係をHERPは明示していませんが、3月に予告した方向を、人のサポートで具体化したとも読めます。
AIによるマッチングは『誰と誰が会うべきか』までは示せても、日程を合わせ、選考の途中で迷う求職者に付き添い、企業とのあいだで温度感を調整するところまでは担いきれません。HERPは、自社のデータで出会いをつくり、その後ろの工程を人で引き受ける、という分担を選んだことになります。
この設計は、HERPという会社の見え方も変えます。これまでのHERPは、企業の採用活動を支えるシステムの提供者でした。今回からは、個々の求職者の転職に直接関わる当事者でもあります。
もう一つの見どころ:Agent Networkが『両側』に効く
意外性があるのは、『HERP Agent Network』の位置づけの変化です。
4月の提供開始時、『HERP Agent Network』は採用企業向けの仕組みとして発表されました。採用企業が使っているATSからワンクリックで求人を出稿し、取引先以外も含む1000人以上のエージェントから推薦を受けられるサービスです。『ジョブミル』の求人出稿機能をリブランディングしたもので、2026年4月時点で内定実績は約500件、推薦された応募の有効応募率は20%で、直接契約の推薦と同水準としています。
当初は、企業の求人をエージェントへ『届ける』ための仕組みでした。
今回の発表では、同じネットワークに登録されたエージェントの求職者を、『HERP Career』の『面談リクエスト』の提案対象に加えるとしています。求人を届ける経路だった場所が、求職者が『来る』経路にもなるということです。
『HERP Hire』の選考データでマッチングの精度を上げ、『HERP Career』で企業と求職者を引き合わせ、マッチ後の選考には自社のエージェントが入る。そこへ『HERP Agent Network』から紹介会社の求職者も加わる。別々に始まった事業が、一本の流れとしてつながり始めています。
紹介会社から見ると、HERPは求人の仕入れ先であると同時に、求職者の獲得では競合にもなり得る存在になりました。一方で、他社エージェントの登録求職者を提案対象に取り込む設計は、紹介会社を外すのではなく、ネットワークの一部として組み込む形とも読めます。
関連動向:データを活かす事業へのシフト
HERPは2026年8月にシリーズCの資金調達を発表し、ATSに蓄積した選考データをAIマッチングに活用する方針を掲げました。その背景と投資家の評価は、HERPはなぜ『ATSの会社』で終わらないのかで詳しく読み解いています。
今回のリリースも、締めくくりで「求人プラットフォームとしてエージェントサービスを強化し」「マッチングシステムを目指して開発を進めて」いくとしています。
今後の焦点は、『HERP Agent Network』経由の求職者とマッチしたとき、選考の支援を誰が担うのかです。HERPのエージェントなのか、求職者が登録している元のエージェントなのか。今回のリリースには記載がなく、ここをどう設計するかで、紹介会社との協業と競合の線引きが見えてきそうです。
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