ファインズが動画DXの顧客基盤から人材紹介へ広げる理由

ファインズが動画DXの顧客基盤から人材紹介へ広げる理由

2026年11月4日ニュースを読む
目次

株式会社ファインズが、M&Aで迎えた人材紹介会社2社と新会社を軸に、HR事業へ本格参入すると発表しました。

動画DXで2.5万社超の中小企業と取引してきた会社が、「採用を成功させる支援」まで領域を広げる一手です。

買収した2社の得意領域と、ファインズの顧客の業界構成を並べると、この参入の組み立て方が見えてきます。

出典

この記事の要点

  • 買収した人材紹介会社の得意領域である建設業は、ファインズの顧客の4社に1社超を占める業界と重なり、会社も相互送客を掲げる
  • 2027年6月期の会社予想は売上高42億円のうちHR事業が12億円で、約3割をHR事業が担う計画
  • 足元のHR事業は損益連結1四半期目で、統合費用が先に出ている段階

株式会社ファインズとは

株式会社ファインズは、東証グロース市場に上場する(証券コード5125)、中小企業向けのマーケティングDX企業です。

動画制作・配信の「Videoクラウド」を主力に、DXコンサルティングやSNS運用代行などのサービスを手がけ、東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌・金沢の7拠点で営業しています。

累計取引社数は25,000社を超えます(2026年5月末時点)。うち動画制作の累計取引社数は12,000社超です(2025年6月末時点)。

パーパスは「企業と地域社会の未来に、テクノロジーの追い風を。」です。決算説明資料では、従業員100名未満の中小・小規模企業をメインターゲットに置いています。

何が起きたか

株式会社ファインズは2026年10月29日掲載のプレスリリースで、HR事業への本格参入を発表しました。

2026年9月から、グループ体制を「DX事業」と「HR事業」の2本柱に移行しています。会社はこれを『第二の創業期』と位置づけています。

HR事業の中身は次の3社です。

会社役割得意領域
株式会社オルプラ人材紹介(2026年1月にグループ化)モビリティ業界のドライバーなど、エッセンシャルワーカーの転職支援
株式会社Nexil人材紹介(2026年1月にグループ化)自社メディア「楽楽転職」による集客。20代の正社員未経験層、建設業への転職支援
株式会社ヨクスル新会社(2026年10月6日設立・ファインズ100%出資)求人媒体の運用代行、採用イベント等

オルプラとNexilの2社で、月間10,000名超の求職者との接点があるといいます。

背景について会社は、中小企業の人材確保が慢性的で深刻な経営リスクになっていると説明しています。

2026年2月の決算リリースでも、中小企業の課題の多くは『人材確保』にあり、人材支援の需要は今後も拡大すると見込んでいました。

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トラキャリの視点:買収先は「顧客の業界」に合わせて選ばれている

ファインズの決算説明資料には、顧客の業界構成(前期末時点)が載っています。

業界割合
サービス業35.0%
建設・工事26.3%
福祉・介護8.8%
小売り・卸売業6.0%
不動産5.7%
運送業3.0%

建設・工事だけで4社に1社を超えます。

そして、グループに迎えたNexilは建設業への転職支援に実績があり、今後はサービス業へ支援範囲を広げる方針です。

ファインズ自身も、M&Aの発表時に『建設・サービス業を中心とした顧客基盤』と2社の転職支援力を組み合わせ、グループ間で相互に送客する体制をつくると述べています。

人材紹介は、求人を出してくれる企業と、転職を考える求職者の両方を集めて初めて成り立つ事業です。

ファインズは前者の企業との取引をすでに持っていて、2社が持っているのは後者の求職者との接点だ、と整理できます。

しかも買収先は、ファインズの顧客で多い業界の採用に強い会社です。

手元の顧客が抱える採用の課題を、その業界に強い紹介会社で受け止める組み立てだと読めます。

もう一つ見ておきたいのは、ファインズの売り方の変化です。

動画制作やDXコンサルは、主に「企業の魅力を伝える」側の支援でした。

M&Aの発表文では、これを『採用を成功へと導く支援』へ広げると書いています。認知形成から応募獲得、入社までを一気通貫で支援するという打ち出しです。

決算短信では、Webマーケティングの知見と子会社2社の採用支援ノウハウを掛け合わせ、AIを活用した『次世代型のRPO(採用プロセスアウトソーシング)サービス』の提供を加速するとしています。

新会社ヨクスルが求人媒体の運用代行と採用イベントを担うのも、この流れの中にあります。

紹介手数料だけでなく、求人広告の運用や採用業務の代行まで、中小企業の採用活動に複数の入り口をつくろうとしている、と考えられます。

数字で見るHR事業の現在地

2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)の連結業績は、売上高2,758百万円、営業利益127百万円でした。

この期から連結決算に移行したため、前期比は開示されていません。

グループ2社の損益を連結したのは第4四半期(2026年4〜6月)からです。HR事業のセグメント売上高277百万円、セグメント利益42百万円は、その1四半期分にあたります。

決算短信によると、HR事業では採用決定数が堅調に推移した一方、次のような費用が先に出ています。

  • Nexilで期中に決めたSES事業からの撤退に伴う事業再編
  • 事業拡大に伴う2社のオフィス移転
  • グループ基準の内部管理体制を整えるための、セキュリティ・会計システム等の導入費用
  • 将来に向けた採用費・広告宣伝費の追加投資

グループ参画初年度として、コストが先行した形です。

2027年6月期の計画

会社の2027年6月期の連結業績予想は、売上高4,200百万円、営業利益300百万円です。

決算説明資料では、売上高の内訳をDX事業3,000百万円、HR事業1,200百万円としています。

HR事業が通期で寄与する初めての年度で、売上の約3割を人材紹介を中心とするHR事業が担う計画になります。

参考までに、買収前の2社の売上高は、オルプラが332,868千円(2025年8月期)、Nexilが523,952千円(2025年3月期)と開示されています。

PMIの進み方:AIを紹介の現場に持ち込む

決算説明資料によると、2社の業務統合(PMI)は2026年1〜3月に経営体制の整備や事業計画の作成を進め、4月以降は事業推進のフェーズに入りました。

具体的な取り組みとして、ファインズからオルプラへ、AIによる業務改善の試行が挙げられています。

応募者の履歴書や面談のログをAIアプリに入れ、フォーマットの整った履歴書・職務経歴書を自動で作るもので、プロトタイプの試行を始めた段階だといいます。

ファインズは社内でも16件のAIエージェント・AIアプリを稼働させ、月971時間の工数削減につなげたと開示しています。

キャリアアドバイザーの事務作業をAIで減らせれば、1人あたりが担当できる求職者の数に効いてくると考えられます。

動画DXの会社が人材紹介に持ち込むのは、顧客基盤だけではなく、この業務効率化のノウハウでもあると読めます。

決算説明資料では、顧客企業の課題に対応する新規領域について、今後も積極的にM&A等を検討するとしています。2本柱になったファインズのグループ構成がどう広がるかも、今後の開示で追えます。

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