「原則出社」2年連続増でも、テレワークが採用条件として残る理由

「原則出社」2年連続増でも、テレワークが採用条件として残る理由

目次

正社員のテレワーク実施率が21.4%まで下がり、勤務先から『原則出社』を指示されている人は24.6%と2年連続で増えました。

企業が出社に寄せる一方で、テレワーク実施者の81.6%は継続を希望しており、この数字は6年間ほとんど動いていません。

対立に見えるこの2つの数字は、テレワークが『全社一律の制度』から『職種ごとに選び直される条件』へ変わりつつあることを示しています。

出典

この記事の要点

  • 出社回帰は大手だけの動きではなく、すべての企業規模で『原則出社』の指示が増えている
  • 継続希望81.6%の中身はフルリモートではない。実施者の約半数は週1日以下の頻度
  • テレワークをしない理由の首位が『業務の性質』から『制度の未整備』へ入れ替わった

パーソル総合研究所とは

パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームで、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを手がけています。

テレワークに関する定量調査は2020年3月から継続して実施しており、今回が11回目にあたります。調査時期は2026年7月10日〜13日、全国の20〜59歳・従業員10人以上の企業に勤める就業者30,614人(うち正規雇用26,014人)へのインターネット定量調査です。

過去データと比較するため、分析は主に正規雇用の数値で行われています。コロナ禍の初回調査から同じ設問で6年半にわたり定点観測している、国内では数少ない時系列データです。

何が起きたか:実施率は21.4%、『原則出社』は24.6%

2026年7月時点の正社員のテレワーク実施率は21.4%で、前年同期比マイナス1.1ポイントでした。

推移で見ると、2020年3月の13.2%から緊急事態宣言下の2020年4月に27.9%へ跳ね上がり、ピークは2022年2月の28.5%。そこから2023年7月22.2%、2024年7月22.6%、2025年7月22.5%と横ばいが続き、今回さらに1ポイント強下がっています。

同時に動いているのが企業側の方針です。『原則出社の指示がでている』と答えた人の割合は、2023年21.5%、2024年20.9%、2025年22.8%、2026年24.6%と2年連続で増加しました。今回は従業員10〜100人未満から10,000人以上まで、すべての企業規模で前年を上回っています。

一方で、テレワーク実施者の継続希望は81.6%(『続けたい』61.0%+『やや続けたい』20.6%)。2020年11月以降、8割前後の高止まりが続いており、企業が出社に寄せても働き手の意向はほとんど動いていません。

ただし、その81.6%の中身はフルリモートの希望ではありません。実施者の頻度は『1週間に1日未満』29.8%、『1週間に1日程度』19.0%で、約半数が週1日以下です。『毎日(出社無し)』は14.5%にとどまります。前年からの変化を直接尋ねた設問でも、頻度が『減った』が32.7%、『増えた』は5.9%でした。

つまり働き手の側も、フル在宅を求めているのではなく、月に数回でも在宅の選択肢を残しておきたい、という水準で希望が固定されている状態です。

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トラキャリの視点:テレワークは『働き方改革』から『採用条件』の変数へ

全体の実施率だけを見ると『緩やかな縮小』ですが、職種別に分解すると、起きているのは一律の縮小ではなく職種ごとの選別です。

実施率の上位はIT系技術職56.9%、コンサルタント46.0%、経営企画45.4%、企画・マーケティング45.0%。下位には生産技術・生産管理12.7%、営業職(個人向け)12.4%、購買・調達10.8%が並びます。

注目したいのは変化の方向がそろっていないことです。1年前と比べてコンサルタントは16.2ポイント、広報・宣伝・編集は6.9ポイント、商品開発・研究は5.2ポイントと大きく下げた一方、受付・秘書は6.0ポイント、顧客サービス・サポートは2.2ポイント、営業事務・アシスタント職は1.0ポイント上げています。

パーソル総合研究所も、この3年間で『営業職(法人向け営業)』『営業事務・アシスタント職』『顧客サービス・サポート』などはテレワークが定着傾向、『コンサルタント』『広報・宣伝・編集』『営業推進・営業企画』などは減少傾向にあると整理しています。

在宅でこなせるはずの企画・専門職で下がり、対面が前提と見られがちだった事務・サポート職で上がっている。ここから読めるのは、テレワークの可否が『その仕事が物理的に在宅でできるか』ではなく、『会社がどの職種に在宅を割り当てるか』という配分の問題になってきた、ということです。

同研究所の小林祐児主席研究員も、管理職のマネジメント負荷やコミュニケーション上の課題が変わっていないことへの対応として出社が明示的に選択されていると見たうえで、今後のテレワークは『全社的な働き方改革施策というよりも、人材確保のニーズに合わせた、他社との差別化要因としての意味合いを強めていくだろう』とコメントしています。

これは採用の現場感覚とも重なります。トラキャリが扱う求人でも、働き方はハイブリッド型が多数を占め、フルリモートを選ぶ企業は限られます。その一方で、採用競争力を理由にフルリモートを維持している企業も一定数あります。

在宅可否が福利厚生の一項目ではなく、どの職種でどれだけの人材を採れるかを左右する採用条件の変数に移りつつある。継続希望が8割から動かない以上、この変数の重みは当面下がりません。

深掘り:できない理由が『業務』から『制度』へ入れ替わった

今回の調査でもう一つ見逃せないのが、テレワークを実施していない理由の順位が入れ替わったことです。

長く首位だった『テレワークで行える業務ではない』は、2022年2月の48.0%をピークに下がり続け、2026年7月は34.4%。代わって『テレワーク制度が整備されていない』が、2022年7月の30.8%を底に上昇し、38.0%で首位になりました。

『ICT環境が整備されていない』(11.4%)『行う場所がない』(9.3%)『会社が消極的で実施しにくい』(9.1%)は1割前後で横ばいです。

6年半の定点観測で見ると、テレワークができない理由は『仕事の性質上、物理的に無理だから』から『会社が制度を用意していないから』へ移りました。技術や業務内容の制約ではなく、企業側の選択の結果として在宅勤務の有無が決まっている、と読める変化です。

求職者から見れば、これは『この職種だから在宅は無理』ではなく『この会社は在宅を選ばなかった』という差として現れます。同じ職種でも企業ごとに働き方が割れる余地が広がるということで、採用側から見れば差別化の余地があり、応募側から見れば比較軸が増えます。

関連動向:企業規模間の格差は縮んでいる

企業規模別の実施率は、従業員10,000人以上32.8%(前年34.4%)、1,000〜10,000人未満28.8%(同29.9%)、100〜1,000人未満20.1%(同20.7%)、10〜100人未満13.2%(同13.9%)。すべての規模で前年を下回りました。

下げ幅が大きいのは大手側です。10,000人以上の実施率は2022年2月に46.9%あり、そこから14ポイント以上下がっています。中小企業はもともと実施率が低く下げ幅も小さいため、結果として大企業と中小企業の差は縮小しました。

背景を示すのがマネジメント側の困りごとです。上司の回答では『部下の仕事の様子がわからなくなった』が37.1%(2年前比+4.9ポイント)、『部下の労働時間管理が難しくなった』が30.0%(前年比+4.6ポイント)と、いずれも改善ではなく悪化方向に動いています。テレワーク時の不安感も全体的に減っておらず、職場側の課題が解決に向かっていない状況がうかがえます。

業種別では情報通信業が55.7%で最上位を維持する一方、教育・学習支援業は2年間で8.6ポイント低下して14.2%。『原則出社』の指示が多い業種としては、教育・学習支援業、電気・ガス・熱供給・水道業、金融業・保険業が挙げられています。地域別では関東29.9%、東京都単独では35.5%と、他地域との差が残っています。

規模でも地域でもなく職種と業種で割れる。テレワークの分布は、この6年で『会社の大きさ』から『どんな仕事をしているか』へ軸を移してきたと言えます。

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