グロービスが海外に拠点を増やし続ける理由——組織開発は拠点網がないと担えない

グロービスが海外に拠点を増やし続ける理由——組織開発は拠点網がないと担えない

2026年10月5日ニュースを読む
目次

グロービスが、インド・ニューデリー首都圏(NCR)のグルグラムに「GLOBIS India」を設立した。台湾、オマーンに続く2026年3つ目の海外拠点で、これで海外は10か所になる。

海外展開のニュースとして流れていく話だが、同社の法人向け事業が『人材育成』と並べて『組織開発』を掲げていることを踏まえると、拠点を増やすことの意味が変わってくる。

拠点網そのものが提供価値になっている会社として読むと、この10拠点目は腑に落ちる。

出典

この記事の要点

  • グロービスの海外拠点は10か所になったが、そのうち3か所は2026年に集中して開かれている。拠点網の拡張が明らかに加速している局面にある。
  • 同社の法人向けサービスは研修の提供にとどまらず、組織開発・事業開発コンサルティングまで含む。この領域は現地に人がいないと成立しにくい。
  • インドの発表資料に並ぶのは、現地市場の規模(人口14億人以上)と日系企業の集積(NCRに1,400社以上)の両方。どちらか一方の話ではない。

グロービスとは

グロービスは1992年に設立された、経営大学院と法人向け人材育成を柱とする企業グループだ。代表は堀義人氏。国内ではグロービス経営大学院(MBA)の運営で知られるが、事業はそこに限らず、企業研修、ベンチャーキャピタル、eラーニング、出版などを手がけている。

法人向け事業の規模は小さくない。同社サイトによれば、企業研修の導入は年間約3,600社、受講者は年間約42万名、日経225採用企業との取引比率は約89%(いずれも2026年4月時点・同社調べ)。日本の大企業の人材育成に、かなりの密度で入り込んでいる会社だと言える。

海外にも早くから出ている。中国、シンガポール、タイ、米国、ベルギー、フィリピン、インドネシアと拠点を重ね、そこに2026年の台湾・オマーン・インドが加わった。

何が起きたか

グロービスは2026年7月、インドに現地法人「GLOBIS India Private Limited」を設立した。所在地はニューデリー首都圏のグルグラムで、将来的にはムンバイへの開設も予定されている。同社にとって初のインド拠点であり、海外では10拠点目にあたる。

提供するのは、経営大学院のPre-MBA(英語・2026年10月開講予定)に加え、企業研修、リーダーシップ開発プログラム、定額制の動画学習サービス「GLOBIS Unlimited」(英語)。個人向けの学びと法人向けの育成サービスを、同じ拠点から出す構えになっている。

発表資料でインドを選んだ背景として挙げられているのは、大きく2つの数字の束だ。

ひとつは市場としてのインド。人口は14億人以上、年齢の中央値は約29歳、高等教育機関の在籍者は約4,330万人、MBA修了者は約23.2万人にのぼる。ビジネス教育の市場として世界有数の成長余地がある、という説明になっている。

もうひとつが、日系企業の集積だ。ニューデリー首都圏には1,400社以上の日本企業と8,000人を超える日本人居住者がいて、拠点を置くグルグラムだけでも約400社の日系企業が進出している。

そして同社はこの拠点を、単なる支社ではなく『ハブキャンパス』と呼んでいる。オマーンの発表でも同じ呼称が使われており、拠点の位置づけとして一貫している。

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トラキャリの視点:研修は輸出できても、組織開発は輸出しにくい

人材育成サービスを海外に届ける方法は、突き詰めれば2つある。コンテンツを翻訳して送る方法と、現地に人を置く方法だ。

前者で足りるなら拠点はいらない。動画やテキストの学習コンテンツは、実際「GLOBIS Unlimited」のように英語化してオンラインで届けられる。研修も、講師が出張すれば単発では成立する。

足りなくなるのは、サービスが組織開発の側に寄ったときだ。

グロービスの企業研修サイトは、提供するものとして研修プログラムと並べて『組織開発/事業開発コンサルティング』を掲げ、経営と人材開発を専門とするコンサルタントが、企業の外部環境や経営戦略の理解から入り、対話を重ねて育成プログラムに落とし込むと説明している。

これは、決まった教材を配る仕事ではない。誰がどの意思決定を握っていて、どこで戦略が止まっているのかを見た上で設計する仕事だ。現地の組織の中に入れないと、そもそも診断ができない。

ここで拠点網が効いてくる。

グロービスの海外10拠点を並べると、中国・シンガポール・タイ・フィリピン・インドネシア・台湾といったアジアに、米国とベルギー、そして中東とインドが加わる構成になる。日本企業が現地法人を置いてきた地域と、かなりの部分で重なる並びだ。

日本企業のグローバル人材育成では、国ごとに研修の委託先が分かれ、日本本社で決めた育成の枠組みが現地でそのまま動かないという事情がついて回る。育成の設計と、実際に育成を受ける社員の間に距離が空くからだ。

拠点網を持つ会社は、この距離を詰められる。同じ設計の育成施策を、各国の現地法人に同じ枠組みのまま届けられる。グルグラムのように、日系企業の地域本部が置かれ、意思決定する側も育成される側も現地にいる街であればなおさらだ。

『ハブキャンパス』という呼び方は、拠点を単体の教室ではなく、ネットワークの結節点として扱っていることを示している。拠点が1つ増えるたびに、拠点網全体でカバーできる範囲が広がる。組織開発を掲げる以上、拠点の数はそのまま提供可能な範囲の広さになる。

ここに、もうひとつ見落としやすい事実がある。海外10拠点のうち3拠点が、2026年の数か月のあいだに集中して開かれているということだ。台湾は同年5月設立で世界8拠点目、オマーンは6月開設で9拠点目、そしてインドが7月設立で10拠点目。1992年設立の会社が積み上げてきた海外拠点の3割が、この短期間に増えている。拠点網の拡張が、明確にペースを上げている局面だと読める。

深掘り:Pre-MBAという入口の置き方

3拠点に共通しているのが、Pre-MBAを開講の看板に置いている点だ。インドでは2026年10月開講予定、台湾でも開設に合わせてハイブリッド形式での開講が計画され、オマーンでもオンラインのPre-MBAクラスが同年10月に予定されている。

Pre-MBAは、MBA本課程の手前にある体験的なプログラムにあたる。拠点を開く際にここを入口に据えるのは、現地に「グロービスで学んだ人」のプールを先に作る動きとして理解できる。

法人向けの組織開発は、現地のビジネスパーソンや企業との接点がないところにいきなり立ち上がるものではない。個人向けの学びで接点を作り、そこから法人向けに広げていく。拠点の開き方としては筋が通っている。

英語のMBAプログラムについては、2009年の開講以来、90カ国から1,000名以上の卒業生を輩出しているという。国籍の広がりが、そのまま拠点展開の下地にもなっている。

深掘り:中東とインドが同じ年に並んだこと

2026年に開いた3拠点のうち、オマーンとインドは、これまでの拠点の並びから見ると新しい方向だ。

オマーンの「GLOBIS Middle East」はグロービスにとって初の中東拠点で、同国の国家戦略「Oman Vision 2040」が掲げる経済の多角化と人材育成を支援する位置づけが示されている。想定する相手として、企業だけでなく政府機関や教育機関、起業家までが挙げられている点も、日系企業中心のアジア拠点とは色合いが違う。

インドも同様に、日系企業の集積と現地市場の成長性が並列で語られていた。日本企業の海外拠点を支える役割と、現地のビジネス教育市場そのものを取りに行く役割の、両方が置かれている。

拠点網が日系企業の進出先をなぞる段階から、現地市場に根を張る段階へ。1年で3拠点というペースと合わせて見ると、この数年の動きは今後の展開を読む手がかりになる。

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