
TENTIAL、D2Cの成功要因は“プロダクト”ではなかった——売上193億円を生んだ「医療機器×自社EC」の構造
2025年、ウェルネス市場は睡眠不足・慢性疲労・プレゼンティーズムといった構造課題が顕在化し、5.4兆円規模から14兆円規模へ拡大する転換点を迎えています。
今、この巨大市場に対し、新たな解釈と打ち手を提示しているのがTENTIAL(テンシャル)です。最新の12ヶ月換算売上は約193億円と急成長し、医療機器対応まで踏み込む同社は今、「24時間コンディショニングOS」確立に向けた重要なフェーズにあります。
事業に資するHR人材を志向する方に向けて、成長産業、成長企業の実態に迫ります。
193億円と医療機器許可が示すTENTIAL第二フェーズ
2024年9月〜2025年8月の12ヶ月換算売上は約193億円、前年の約2.5倍で、営業利益も約22億円まで拡大しています。
主力リカバリーウェア「BAKUNE」は累計100万セット超を販売し、年間売上・販売数・ギフト売上でNo.1を獲得しました。
さらに第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、「医療機器としてのリカバリーウェア」を自社完結でスケールさせる土台を整えています。
単なるヒット商品ではなく、エビデンスと制度対応を持つブランドが上場規模に近づきつつあることが、TENTIAL(テンシャル)を取り上げる理由です。HRの視点では、「睡眠やコンディションを個人任せにせず、どこまで“インフラ”として扱えるか」を検証する好例になっています。

(出典:TENTIAL 通期決算説明資料)
リカバリーを日常に埋め込むコンディショニングD2C
TENTIAL(テンシャル)は、「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」をミッションとするコンディショニング特化D2Cブランドです。
アスリートのコンディショニングを一般生活者の日常に落とし込むことを掲げ、SLEEP・WORK・FOOTの三領域でプロダクトを展開しています。
SLEEPではBAKUNEリカバリーウェアを中心に、掛け布団やマットレス、枕、アイマスク、入浴剤など睡眠前後の体験を一通り揃えています。WORKではワークウェア「MIGARU」やセットアップなど、日中に着られるリカバリーウェアを、FOOTではリカバリーサンダルやインソールを展開し、2024年時点で80〜150 SKU規模のラインナップになっています。
業績は、2020年1月期の売上約3,700万円から2024年1月期約54億円、さらに直近12ヶ月で約193億円まで伸び、営業利益約22億円・営業利益率11〜12%と、高成長と収益性を両立しています。粗利率は約70%で、自社ECと直営店舗を軸にした高粗利モデルが機能しています。
売上の約9割が自社チャネル経由で、会員約21.5万人のうち30〜50代が7割超、年収400万円以上が過半という「健康投資に前向きなミドル〜シニア層」が中核です。
EC売上の3割超は既存顧客によるもので、約4割がギフト購入経験を持つなど、「自分で使い、贈り、また買う」という循環が生まれています。

(出典:TENTIAL 通期決算説明資料)
5.4兆円の“未整備な休息市場”がTENTIALの成長余地
TENTIAL(テンシャル)が挑むリカバリー市場は、「癒し」「衣」「食」「住」「運動」「睡眠」などを含む広い領域であり、2023年時点で約5.4兆円、2030年には約14.2兆円へと約2.6倍に拡大する予測です。
その中でも、TENTIALが直接関わる衣服、寝具・睡眠関連、運動関連は、それぞれ数倍規模の成長が見込まれており、「生活の中のコンディショニング」に対する支出が本格的に立ち上がるフェーズにあります。
一方、日本の睡眠時間はOECD(経済協力開発機構)でも最短クラスとされ、長時間労働や常時オンラインの働き方が「慢性的に整わない状態」を生み続けています。
対処はマッサージや整体、栄養ドリンクやサプリ、リラクゼーションアイテム、一般的なパジャマや寝具の買い替えといった「その場しのぎ」にとどまっており、こうした手段は部分的な効果はあるものの、エビデンスや継続性の観点では断片的で、「疲れたらなんとかする」発想から抜け出せていません。
TENTIAL(テンシャル)が実質的な競合として相手にしているのは、特定社名ではなく、この「場当たり的なケアと、“なんとなく健康に良さそう”な商品群」そのものです。
同社は、医療機器レベルのエビデンスを持つプロダクトを、睡眠・仕事・歩行の三つの時間帯に配置し、「常に整った状態でいる」ことを目指すアプローチを取っています。
リカバリー市場自体が拡大する中で、この発想がどこまで生活者や企業に浸透するかが、今後の伸びしろと直結します。

(出典:TENTIAL 通期決算説明資料)
睡眠・仕事・歩行を貫く24時間コンディショニングモデルで勝負
TENTIAL(テンシャル)の事業は、「眠る・働く・歩く」という日常の時間をコンディショニングの対象とし、24時間の状態管理を支援する設計になっています。
SLEEP・WORK・FOOTの三つの領域が事業の骨格です。
SLEEP領域のBAKUNEリカバリーウェア
特殊繊維SELFLAME®を用いて遠赤外線の再放射による血行促進を狙った製品で、家庭用遠赤外線血行促進用衣として一般医療機器の届出を行っています。
疲労回復や筋肉のコリ軽減といった効能を明示できる点が特徴です。掛け布団やマットレス、枕、アイマスク、入浴剤は、寝る前から睡眠中までを一体で整える設計になっており、睡眠をコンディション調整のプロセスとして捉え直しています。

(出典:TENTIAL 会社説明資料)
WORK領域のMIGARU
「仕事着でありながらリカバリーウェアでもある」シリーズです。SELFLAME®を用いたセットアップやジャケットは、日常のビジネスシーンになじむ見た目でありつつ、長時間着用時の身体的負荷を抑えることを意図しています。
働き方が多様化する中で、日中をどのように整えるかは重要なテーマであり、同社の第二の柱になりつつあります。

(出典:TENTIAL 会社説明資料)
FOOT領域リカバリーサンダルやインソール
EVA素材と「キュボイドバランス理論」によるアーチサポート構造により、重心の安定や歩行時の負担軽減を図っています。長時間の立ち仕事や移動が多い人にとって、足元からの調整はパフォーマンスに直結します。

(出典:TENTIAL 会社説明資料)
ターゲットは、30〜50代のビジネスパーソンとその家族やスポーツ愛好者で、ミドル〜シニア層の高・中所得者に支持されています。自分のコンディションに投資する価値観が浸透している層であり、TENTIALの製品との親和性が高いといえます。
ビジネスモデルは、自社ブランド・自社チャネル前提のD2C+SPA型で、製造はOEMを活用しつつ、企画・開発・エビデンス取得・マーケティング・EC運営・カスタマーサポートを自社で担い、ブランド体験を一貫してコントロールしています。
売上の約9割が自社ECと直営店舗によるもので、粗利率約70%の収益構造を支えています。自社ECでは、購買履歴や閲覧行動、属性情報、問い合わせ内容などの一次データを統合し、広告運用や商品改善に活用しています。
チャネル設計は、オンライン主導にオフラインを補完する構造です。自社ECとアプリを基盤に、Amazonや楽天を新規接点として活用しつつ、主要都市に16店舗を展開し全店黒字を維持しています。
店舗は「試せる場」として機能し、その後のECでのリピート購入につながる導線を形成しています。ホテルや航空会社との連携も、体験を通じてブランド認知を高め、ECへの流入につなげる役割を果たしています。
この構造は、将来的に企業の健康経営や福利厚生と組み合わせ、「従業員のコンディションを整えるパッケージ」として提供できる可能性も持っています。

(出典:TENTIAL 会社説明資料)
エビデンスとデータで“ヘルスケアD2CのOS”を取りにいく
TENTIALの競合優位性は、エビデンス、データ、ブランドの三つに集約されます。
①科学的エビデンスと薬機法対応
TENTIAL(テンシャル)は一般医療機器として届出済みの商品を持ち、大学や企業との共同研究を含むリサーチを継続しています。
SELFLAME®が深部体温や睡眠の質に与える影響を検証した研究や、睡眠指標・主観的疲労感の改善を示す実証データを蓄積しており、機能を裏付けた商品設計を進めています。
第二種医療機器製造販売業の許可により、管理医療機器の認証や市販後安全管理まで自社で行える点も大きな差別化要素です。
②データドリブンなマーケティングと商品改善
自社EC・アプリ・店舗から得る一次データを統合し、購買・行動・VOCを分析することで、違和感や不満の原因を特定し、縫製や設計、サイズの調整に反映しています。
この体制により、TVCMなどのマス広告を実施しても獲得効率を安定させることができ、広告宣伝費を売上の約4分の1に抑えながら成長を維持しています。
③ブランドと共創パートナー
BAKUNEは高価格帯・オンライン中心ながらNo.1ブランドとして認知が進み、トップアスリートやメジャーリーグ選手、パラアスリートが使用する実績が蓄積されています。
これらのフィードバックが商品開発に生かされ、「プロが日常的に使うギア」という信頼につながっています。さらに、シックスセンシズ京都やANAファーストクラスといったパートナーとの連携は、「質の高い休息」という文脈でブランド価値を高めています。
将来構想としては、Sleep・Work・Footなど既存カテゴリのシェア拡大に加え、BATHやスポーツウェアなど周辺領域への拡張、北米・西欧・中国での展開が想定されています。
同社が目指すのは「リカバリーウェアの会社」を超え、生活全体のコンディショニングを支える“OS”的存在になることです。
中長期では数千億円規模の売上を視野に、日常のあらゆる時間に入り込む事業モデルを描いています。

(出典:TENTIAL 通期決算説明資料)
ヘルスケア×テック×D2Cを束ねるハイブリッド経営体制
TENTIAL(テンシャル)の組織は、事業開発、コンサルティング、R&D、D2C運営など多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されています。
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