
クチコミ評価が『採用力』になる——オープンワークが進めるHR垂直統合
社員クチコミサイトとして知られるオープンワークが、2026年12月期第2四半期(中間期)で連結営業収益30.0億円・前期比+32.7%と伸びた。
牽引したのはクチコミではなく、ダイレクトリクルーティング『OpenWorkリクルーティング』の21.6億円(+39.3%)で、全体の7割超を占める。
同社は集めたクチコミ評価を採用力に変える垂直統合を進めており、その設計はHR業界の競争軸の変化を映している。
出典一覧
- オープンワーク株式会社『2026年12月期 第2四半期 決算説明資料』(2026年8月10日開示)
- オープンワーク株式会社 2026年12月期第2四半期決算説明会(2026年8月14日開催・ログミ Finance書き起こし)
- 市場規模:矢野経済研究所(決算説明資料内の出典)
この記事の要点
- オープンワークの収益はクチコミ閲覧課金ではなくダイレクトリクルーティングが主軸に移り、中間期で全体の7割超を占める。
- 求人の露出やスカウトは『クチコミ評価が高い企業ほど優遇される』設計で、働きがいが採用の露出量に直結し始めている。
- メディア→ダイレクトリクルーティング→人材紹介エージェントへと垂直統合が進み、狙う市場は約1,500億円から人材紹介市場全体の約6,000億円へ広がる。
オープンワークとは
オープンワーク株式会社は2007年設立、東証グロース上場のHR企業で、親会社はリンクアンドモチベーション。主力は日本最大級の社員クチコミサイト『OpenWork』で、登録ユーザーは820万人、社員クチコミ・評価スコアは累計2,190万件にのぼる(2026年6月末時点)。近年はこのクチコミ・ユーザーデータを基盤に、企業向けのダイレクトリクルーティング『OpenWorkリクルーティング』、クチコミデータを資産運用会社などに提供するオルタナティブデータ事業、そして人材紹介事業へと展開を広げている。
何が起きたか
2026年12月期第2四半期(2026年1〜6月)の連結営業収益は30.0億円で前期比+32.7%、連結営業利益は10.9億円(+30.4%、営業利益率36.4%)。今期2Qから連結決算へ移行したため、前年同期比は前期のオープンワーク単体との比較になる。
牽引役はダイレクトリクルーティングの『OpenWorkリクルーティング』で、中間期の営業収益は21.6億円(+39.3%)と全体の7割超を占めた。四半期単独では11.6億円と過去最高を更新している。一方、クチコミサイト『OpenWork』は6.5億円(+4.1%)と横ばいで、同社はこれを『OpenWorkリクルーティングを成長させるためのOpenWork側の意図的な収益コントロール』と説明している。母数も広がり、掲載求人数は13.4万件(+35.9%)、Web履歴書登録者は183万人(+21.0%)、累計導入社数は6,510社(+9.5%)となった。
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トラキャリの視点:クチコミ評価が『採用の通貨』になる
注目したいのは、伸びている金額よりも『何が求人の露出を決めているか』だ。従来の求人媒体では、掲載料の金額順に求人が上位表示されるのが一般的だった。これに対しオープンワークは『社員からの評価スコアによる求人表示』を掲げる。決算説明会でも大澤社長が『クチコミの評価が高い企業ほど、採用媒体上のアルゴリズムやスカウト条件でも優遇される』と明言している。つまり、求職者がつけた働きがいの評価が、そのまま企業の採用露出量に効く設計になっている。
これは求人ビジネスの課金構造の転換を示唆する。露出を買うのは『いくら払うか』ではなく『どう評価されているか』——蓄積された評価データが採用力に直結し、働きがいそのものが採用の資産に変わっていく。人的資本経営や情報の透明性という潮流とも噴み合う動きだ。
収益の質にも同じ変化が表れている。同社はダイレクトリクルーティングを、基本利用料(120万円/年〜)を先に支払う有料プランへ移行させた。決算説明会によれば、無料キャンペーンの終了で導入社数の増加ペースは鈍化したものの、『有料でも利用したいと考える企業が中心となり、収益にしっかり反映されている』という。求人掲載やスカウトの世界でも、固定費を先払いしてでも使う採用チャネルという位置づけが通り始めている。
HR業界の視点で言えば、採用競争力を左右する軸に『どう評価されているか』という変数が加わり、その評価データを握るプレイヤーが採用市場で発言力を持ち始めている、という構図が読み取れる。
メディアからエージェントへ広がる垂直統合
オープンワークはさらに、クチコミメディアの外側へ踏み出している。2026年4月には人材紹介のBNGパートナーズをM&Aで取得し、人材紹介事業に進出した。BNGはハイクラス人材を中心に5万人超のタレントプールを持ち、ここへオープンワークのクチコミ・キャリアデータと、エージェントによる対人支援を掛け合わせる狙いだ。
背景にあるのは立脚市場(TAM)の拡大である。同社はダイレクトリクルーティング市場(約1,500億円)から、新卒やダイレクトリクルーティングを含む人材紹介市場全体(約6,000億円)へと市場を広げる構想を示す(市場規模は矢野経済研究所)。ロールアップ型のM&Aで自社エージェント機能を確立し、採用プロセスの川下(採用決定への直接支援)まで自社で担おうとしている。
AIの実装も各ファネルで進む。クチコミ・評価スコア・職務経歴・行動ログといったデータを使い、求人ランキングの最適化、おすすめ企業のレコメンド、スカウト理由文の自動生成などを順次組み込み、2030年に営業収益150億円以上を計画している。
まとめると、クチコミという『評価データ』を核に、メディア(集客)→ダイレクトリクルーティング(マッチング)→エージェント(決定支援)へと、採用プロセスの川上から川下までを一社で垂直統合しようとしている。データを持つメディアが人材紹介の領域に降りてくる動きは、既存の紹介会社や求人媒体との競争軸を塗り替える可能性がある。
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