
ReFaが牽引するMTG、“売上拡大”だけでは説明できない高収益化の核心
2025年、美容×ウェルネス市場は「おうち美容」の定着とアジア需要の拡大により、高機能ヘアケア・美容家電が再び成長領域となっています。
今、この市場において、明確な成長軸を示しているのがMTGです。
2025年通期決算では営業利益が前期比3倍超の106億円へと急回復し、同社は現在、ReFaヘアケアを中心に事業構造の再強化を進める重要なフェーズを迎えています。
事業に資するHR人材を志向する方に向けて、成長産業、成長企業の実態に迫ります。
営業利益3倍増が示す、MTGの「高収益体質」への転換点
2025年、美容・ウェルネス市場は、国内需要の成熟とグローバル競争の激化という二つの圧力にさらされています。
そのなかで、MTGは一度の業績低迷を経て、営業利益が前期比3倍超の106億円というV字回復を遂げ、「稼ぐ力」の質を変えつつある企業です。
「ReFa」ブランドのヘアケア製品を中心に、高付加価値なプロダクトの構成比を引き上げ、原価率と販管費の両面を引き締めた結果、営業利益率は一桁台から2桁台へと大きく改善しました。
売上800億円・営業利益50億円の計画を掲げ、150アイテムの新商品投入と6つの新ビジネスを同時並行で進めています。
成長余地の大きいヘアケア・ファインバブル・メディカル・サステナビリティ領域を軸に、「ブランド企業」から「WELLNESSプラットフォーム企業」へと進化しようとしている今のタイミングでこそ、同社の実像を整理する意味があります。

(出典:MTG 決算説明資料)
ReFa売上728億円、前年比42%に到達した現在地
MTGは、名古屋に本社を置く美容・健康領域のブランド開発カンパニーです。
1996年創業、2009年に美容ローラー「ReFa」、2015年にEMSトレーニングブランド「SIXPAD」を立ち上げ、2018年に東証グロース市場へ上場しました。
現在は「BEAUTY」と「HEALTH」の2領域で、ドライヤーやヘアアイロン、シャワーヘッド、シャンプー・トリートメントといった美容プロダクトから、EMSトレーニング機器、リカバリー機器まで幅広く展開しています。
直近の決算では、売上高は約720億円規模まで回復し、主力ブランドであるReFaが500億円超を占め、ReFaは前年から20%超の増収を続けており、SIXPADも横ばいから再成長フェーズへ移行しつつあります。
チャネル面では、自社ECや通販を中心とする「ダイレクトマーケティング」、美容室・エステサロンを通じた「プロフェッショナル」、百貨店・免税店・量販店などの「リテールストア」という3つの国内事業に加え、中国・韓国を中心とするグローバル事業を展開しています。
国内3事業はいずれも二桁成長を維持しており、とくにリテールストアは前年比30%超の伸長と、ブランドの「面」での浸透が進んでいます。
構造改革期にはコスト削減と不採算事業の見直しに踏み切り黒字転換を実現し、そこからReFaを軸に再成長に舵を切ったことで、「荒削りな成長から、利益を伴う成長への転換」を成し遂げました。

(出典:MTG 決算説明資料)
美容3.8兆円×健康10兆円、「日常ウェルネス」を巡る成長市場
MTGが戦う市場は、国内外の美容・健康領域で、美容市場は約3.8兆円、そのうちヘアケアが約6,500億円、スキンケアが約2兆円と試算されています。
健康関連市場は約10兆円規模とされ、生活習慣病予防やコンディショニング、リカバリーといった「日常のウェルネス」に対する支出が伸びています。
需要側の変化としては、以下の構造が重なっています。
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コロナ禍を経て「おうち美容」「セルフケア」が定着し、高機能なドライヤーやシャワーヘッドに3〜5万円以上を投じる消費者が増えている
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高齢化やリモートワーク普及により、日常的な運動不足・肩こり・むくみなどへの不満が顕在化し、EMSやマッサージ機器への支出が増えている
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アジア・北米を中心に、日本発ブランドの品質・デザインに対する信頼が依然として高く、「JAPAN BRAND」を指名買いする傾向がある
競合は、特定の一社というより「大手総合家電メーカー」と「低価格コピー品」と「サロン専売ブランド」の三層構造です。
MTGが狙うポジションは、この三層のちょうど中間にある「高付加価値×日常使い」のゾーンです。
大衆家電より明らかに高単価、かつサロン起点の信頼とEC・ドラッグストアを通じたリピートを両立させることで、「美容機器のプレミアム・マス層」を取ろうとしている点が特徴的です。

(出典:MTG 事業計画及び成長可能性に関する資料)
美容師発の体験を家に届ける、ReFaのBtoBtoC×SPAモデル
MTGの成長を牽引するのは、ヘアケアブランド「ReFa」で、美容師の技術をテクノロジーで再現し、自宅でもサロン品質を得られる点を価値として設計されています。
ドライヤーやアイロンには温度を検知して自動で温冷を切り替える「プロセンシング」を搭載し、髪のダメージを抑えながらツヤを出し、ファインバブルシャワーヘッドは、微細泡による洗浄と肌当たりの良さで、浴室でヘッドスパのような体験を可能にします。
また、シャンプーやトリートメントといったケア商品も展開し、「デバイス+消耗品」で継続的な利用を促す構造を築いています。
ドラッグストア3,000店への展開も予定されており、日常的に買い足せる環境づくりも進んでいます。
BtoBtoCとSPAを組み合わせた“体験起点”の事業設計
MTGは企画・デザイン・マーケティングまでを担うSPA型に加え、美容室・百貨店・EC・ドラッグストア・ホテルといった多様なチャネルを組み合わせ、ブランド体験を広げています。
特に強みとなるのが、美容室を起点としたBtoBtoCモデルです。
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美容室でReFa製品を体験
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気に入った顧客が百貨店やECで購入
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サロンはVEENA(ファインバブル発生器)などで客単価を向上
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ケア商品の購入にもつながる
この「体験→購入→継続」の流れが、ReFaの成長を下支えしています。
また、ホテルとの連携による「ReFa ROOM」は、2,600施設・約45,000室で製品を設置し、旅行中に自然な接点を生む取り組みで、“非日常の体験”を、帰宅後の購買へつなげる導線として機能しています。


(出典:MTG 決算説明資料)
SIXPAD・育成ブランド:WELLNESS領域の第二エンジン
MTGはReFaだけでなく、SIXPADや育成ブランドを通じてWELLNESS市場を広げています。
SIXPADはスポーツ・ヘルスケア・リカバリーの3領域でEMS機器を展開し、アスリート領域に加えてフットケアや高齢者リハビリ需要を取り込むなど、より広いWELLNESSブランドへと進化しています。

(出典:MTG 決算説明資料)
育成ブランドでは、
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五島の椿:五島列島産の椿を活用したスキンケアブランド(全国約400店舗へ展開)
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EVERING:Visaタッチ決済対応のスマートリングで公共交通インフラなど日常導線へ拡大中
これらの取り組みにより、MTGは単なる美容家電メーカーを超え、複数のWELLNESS事業を並行して育てる企業構造へと変化しています。
6,000件超の知財とストックビジネスがつくる「真似されても崩れない」構造
MTGの競合優位は、抽象的なブランド力だけではありません。数字に裏付けられた知財と研究開発のアセットが基盤にあります。
知財と研究開発という具体的アセット
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研究開発投資:161億円
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国内外研究機関との連携:92機関
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評価レポート:528件(うち学術発表74件)
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累計出願:6,041件、知財権:4,102件(権利化3,249件)
美容家電は模倣品が出やすい市場ですが、MTGは特許・意匠・商標を幅広く押さえることで、模倣による価格崩れを防ぎ、ヒット商品の後も利益率を保てる構造をつくっています。
マルチチャネル × ストックビジネス
もう一つの優位性が、販路の広さとストック収益の組み合わせです。
美容室・百貨店・EC・ドラッグストア・ホテル・クリニックといった多様なチャネルでブランド体験を展開しつつ、
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VEENA(サロン向け)
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SIXPAD MEDICAL PRO(医療EMS)
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SUIGEN(給水装置)
といった従量課金型サービスを拡大しています。
本体を低価格または無償で提供し、使用量に応じて料金を得る「Smart Plan」は、導入のハードルを下げながらMTGに安定収益をもたらす仕組みです。
ここにヘアケア・スキンケアのリピート商材が重なることで、一発ヒットに依存しない収益構造を実現しています。
中期構想:WELLNESSインフラ企業へ
中期では、ROIC10%超・営業利益率15%を掲げ、「日本発・世界No.1のWELLNESSブランド」を目指しており、主要戦略は以下です。
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ReFaヘアケアのグローバル強化(アジア高価格帯への展開)
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ファインバブル技術の横展開(住宅・ランドリー・業務用などB2B化)
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SIXPADの医療・介護領域への拡大(医療機関×在宅ケアの両面で展開)
知財、R&D、マルチチャネル、ストック収益というアセットを組み合わせることで、MTGは「高収益なブランド企業」から「WELLNESSインフラ企業」へと進化しようとしています。


(出典:MTG 決算説明資料)
PC制と「全員経営」で利益志向を末端まで浸透させる組織設計
MTGの組織面での特徴は、「グループ経営」と「全員経営」というキーワードに集約されます。
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