IVRy(アイブリー)が「T2D3」を超える急成長を実現した「競合不在の構造」は、どうやって生まれたのか?

IVRy(アイブリー)が「T2D3」を超える急成長を実現した「競合不在の構造」は、どうやって生まれたのか?

2025年11月20日企業研究
目次

2025年、日本の労働力不足は深刻な構造問題として残り、現場業務の「声の資産化」が急務となっています。今、この市場課題に対し、データプラットフォームへの変貌を掲げて挑むのが株式会社IVRy(アイブリー)です。2025年11月にシリーズDで40億円の大型資金調達を発表し、同社は今、中小企業(SMB)向けの電話DXツールから、エンタープライズ向けデータプラットフォームへと変貌を遂げる重要なフェーズを迎えています。 事業に資するHR人材を志向する方に向けて、成長産業、成長企業の実態に迫ります。

 SMBでの成功を燃料に、さらに大きな産業課題へ挑む

2025年11月、株式会社IVRy(アイブリー)はシリーズDラウンドにおいて40億円の大型資金調達を発表しました。これにより、創業からの累計調達額は106.1億円に達します。

特筆すべきは、この調達がIVRy(アイブリー)にとって、明確な「戦略的ピボット」の狼煙であるという点です。 

これまでIVRy(アイブリー)は、飲食店やクリニックなどの中小企業を対象とした「電話DXツール」として認知され、その市場を席巻してきました。しかし、今回の発表とともに同社が宣言したのは、エンタープライズ領域およびAIデータ基盤への本格進出です。

(出典:IVRy RP TIMES)

「電話」という最もアナログな業務をハックし、T2D3を超える急成長を実現

【事業の現状:アナログ業務のラストワンマイルを攻略】

主力事業として展開しているのは、対話型音声AI SaaS「IVRy」です。主な顧客層は、飲食店、クリニック、不動産管理会社など、慢性的な人手不足に悩む中小企業です。

IVRy(アイブリー)は「リアルの現場の電話」というラストワンマイルに特化し、AIによる自動応答で業務を代替、24時間365日の対応を実現することで、顧客の人件費削減と売上機会の最大化を両立させています。

(出典:IVRy Companey Deck)

【成長実績:PMFの完了と圧倒的なトラクション】

この事業を基盤に、2019年の創業以来、IVRy(アイブリー)は驚異的な成長を続けています。SaaSスタートアップの理想的な成長曲線とされるT2D3というベンチマークを上回るペースで急成長を遂げています。

-導入実績の拡大

累計アカウント数は40,000件を突破しました。導入範囲は全国47都道府県、97業種以上に及び、電話DXクラウド分野での導入シェアNo.1を獲得しています。

-圧倒的なデータ資産

サービスを通じて処理された電話着信データは累計6,000万件以上に達しています。

-高い顧客満足度

顧客満足度は5点満点中4.9という極めて高いスコアを維持しています。

これらの実績は、同社がSMB市場においてプロダクト・マーケット・フィットを完全に達成し、次のフェーズへ進むための強固な基盤を築き上げたことを示しています。

(出典:IVRy Companey Deck)

競合不在の「安価×高機能」という巨大な空白

IVRy(アイブリー)が対峙している市場は、日本社会の深刻な構造課題と、テクノロジーの空白地帯が重なり合う、極めてユニークで魅力的な領域です。

【強力な成長ドライバー:逃れられない労働力不足と市場の拡大】

この市場を押し上げる最大の要因は、日本の構造的な「労働力不足」で2030年には約644万人の労働力が不足すると予測されています。

この問題は、現場労働を伴う産業において「解決しなければ事業が継続できない」という死活問題になりつつあります。

日本の労働生産性はG7加盟国中で長らく最下位に低迷しており、生産性向上が国策的な急務であることも追い風です。 

この社会課題を背景に、市場規模は爆発的な拡大が見込まれています。日本の会話型AI市場は、2024年の7億2700万米ドルから、2033年には30億9200万米ドルへと、年平均成長率17.5%で推移すると予測されており、今後10年間で約4倍の市場拡大が確実視されています。

(出典:IVRy Companey Deck)

【競合環境:トップシェア6.5%の断片化と戦略的な空白】

有望かつ巨大な市場であるにもかかわらず、競合環境は驚くほど断片化しており、コールセンターシステム市場の世界的リーダーであるZendeskでさえ、国内でのシェアは約6.55%で、市場を独占する決定的な勝者がいまだ不在であることを意味します。

既存の競合プレイヤーは以下の3つのカテゴリに分類されますが、SMB市場のニーズを完全には満たせていませんでした。

1.エンタープライズ型

高度な機能を持ちますが、導入コストが非常に高額であり、中小企業には導入のハードルが高すぎます。

2.レガシーIVR型

安価ですがAI非搭載で、顧客体験を著しく損ないます。

3.CRM付随型

顧客管理ツールの付属機能であり、電話業務の専門性が低いという弱点があります。

IVRyは、競合が満たせなかった「月額2,980円からという安価さ」と「AIによる自然な対話という高機能」を両立させました。

この「安価×高機能」という独自ポジションが、競合不在のまま独走状態を築いた最大の要因であると分析されます。

「生の話し言葉」を大量に収集し、高付加価値なインサイトへ変える「AI時代のフライホイール」

同社の事業構造は、SMB市場とエンタープライズ市場を循環させる「AI時代のフライホイール」モデルで、互いにリソースを循環させ、シナジーを生む設計になっています。

【① SMB向け:電話DXサービス IVRyの提供価値と機能】

人手不足に悩む中小企業に対し、生産性向上と機会損失防止という直接的な価値を提供しています。

-AI自動応答と自然な対話

LLMを活用した自然な対話能力が最大の特徴です。AIが要件を聞き取り、予約受付、FAQ回答、担当者への転送を判断します。

-ノーコード設定

Web管理画面からドラッグ&ドロップだけで対話フローを自由に作成・変更できます。迅速な設定変更が可能です。

-24時間365日の稼働と機会損失防止

AIが24時間365日代行するため、電話取りこぼしを極小化し、売上向上に貢献します。

-業務の可視化とハラスメント対策

全ての通話内容はAIが自動で文字起こし・要約し、ビジネスチャットへ通知されます。スタッフは電話に中断されることがなくなり、心理的安全性を担保します。

-破壊的価格設定

月額2,980円からという破格の価格設定が、コスト意識の厳しいSMB市場での爆発的な普及を可能にしました。

(出典:IVRy Companey Deck)

【② エンタープライズ向け:データ基盤 IVRy Data Hubへの拡張】

SMB市場での成功を足がかりに、大企業を対象とする戦略的プロダクトで、価値提供の軸が「業務効率化」から「データ活用による価値創出」へと転換されます。

-非構造データの統合

企業内に散在する電話、メール、チャット、商談ログといったあらゆる非構造データを一元的に統合・管理する基盤を提供します。これを検索・解析可能なデータ資産に変えます。

-横断的なAI解析とインサイト抽出

統合されたデータをAIが解析し、解約予兆や競合言及の推移など、経営レベルの重要なインサイトを自動で抽出・可視化します。

(出典:IVRy Companey Deck)

【ビジネスモデルの核心:フライホイールの循環】

IVRy(アイブリー)の収益モデルはSaaS型のサブスクリプションで、IVRy(アイブリー)をSMBに安価で提供し、市場を面で押さえることで、日本中の「生の話し言葉」を大量に収集し、そのデータでAIの精度を強化します。

この高度なAIエンジンを搭載したData Hubを、エンタープライズ企業に高付加価値サービスとして提供します。この循環が回るほど、AIは賢くなり、競合他社が追随できない強力なエコシステムが形成されます。

(出典:IVRy Companey Deck)

「ハルシネーション・ゼロ」への執念と、戦略実行を担保する「技術・データ・トップ人財」の重厚なアセット

【① 技術アセット:現場最適化されたAI】

LLMは強力ですが、そのままではビジネスユースに耐えられません。IVRy(アイブリー)はAIの虚偽回答であるハルシネーションの排除へ徹底的なコミットを行っています。 

また、日本語特有の難しさ、同音異義語の誤認識防止、電話回線特有のノイズ除去技術、0.1秒単位の遅延制御など、現場運用で鍛え上げられた泥臭い技術的知見があります。

【② データアセット:AIの燃料とパイプライン】

IVRy(アイブリー)が保有する「40,000アカウント × 97業界 × 6,000万コール」というデータは、量だけでなくその多様性において、独自の日本語音声データセットとなっています。

現場のリアルな音声を持っていることはAIの学習において決定的な差となります。 さらに、CEOが最大の参入障壁と呼ぶのは、これら膨大な音声データを0.5秒でも早く、かつ安定的に処理し続けるデータパイプラインの設計・運用ノウハウそのものです。

【③ 人財アセット:戦略実行力】

SMBから難易度の高いエンタープライズへの転換を成功させるため、IVRy(アイブリー)は各領域のトッププロフェッショナルをピンポイントで獲得しています。

-エンタープライズ営業の構築:田井 義輝氏(元Salesforce Japan 執行役員)

CSOとして参画し、世界最強の営業組織と言われるSalesforceで培った科学的な営業プロセスをIVRyに持ち込み、大企業攻略のための強固な営業組織をゼロから構築しています。

-プラットフォーム技術の統括:成田 一生氏(元クックパッド CTO)

プリンシパルエンジニアとして参画し、Data Hubの技術基盤を支え、大規模データを処理するためのスケーラビリティを技術面から担保しています。

-組織の急拡大を牽引:西尾 則子氏(元Chatwork CHRO)

上場SaaS企業での組織マネジメント経験を活かし、急成長フェーズにおける組織の壁やカルチャーの希薄化を防ぎながら、採用と育成を加速させています。

これらの人財は戦略実現のために必要なピースとして意図的に招聘されており、この経営チームの厚みこそが未踏の領域への挑戦を可能にしています。

(出典:IVRy Companey Deck)

攻守一体のマトリクス組織が、スピードとエンタープライズに求められる専門性を両立

急成長するスタートアップにおいて、しばしば「スピード」と「組織の崩壊」はトレードオフの関係にありますが、IVRyはこの課題に対し、独自の組織設計で解を出しています。

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本記事はAIによるリサーチ/作成を活用しつつ、当編集部にて事実確認・加筆修正を行ったものです。ただし内容の正確性を担保するものではなく、一部に不足や誤りが含まれる可能性があります。そのため、ご指摘を頂き次第、内容は随時アップデートしてまいります。

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