
ハッカズークが「無償のアルムナイ交流会」を始めた本当の狙い——アルムナイは"採用"から"業務委託"へ
アルムナイ支援大手のハッカズークが、企業・大学の有志アルムナイ交流会を最大10組まで無償で開催代行するキャンペーンを始めた。会場・飲食から集客・当日運営まで同社が負担する、かなり手厚い内容だ。ただしこの一手は、単なる販促以上に、アルムナイという領域が『採用』から『外部戦力の活用』へ広がる転換を映している。
出典一覧
- 株式会社ハッカズーク プレスリリース『企業・大学のアルムナイ交流会開催を無償支援する特別キャンペーンの提供を開始』(PR TIMES)
- 株式会社ハッカズーク プレスリリース『アルムナイの専門性を社会の資産へ変える「アルムナイ業務委託」サービスの提供を開始』(PR TIMES)
- 矢野経済研究所『リファラル採用・アルムナイ採用支援サービス市場に関する調査(2025年)』
この記事の要点
- ハッカズークが有志アルムナイ交流会の運営費を丸ごと肩代わりする無償キャンペーンを開始。裏側では同社の稼ぎ方が変わりつつある。
- カギは5月に始まった新事業『アルムナイ業務委託』。元社員を"採用で呼び戻す"のではなく、"外部人材として借りる(Borrow)"モデルへ軸足が広がった。
- アルムナイは、企業が退職者を再雇用する『出戻り採用』から、専門性を外から使う『業務委託』へと用途が拡張しつつある——今回のキャンペーンはその供給側づくりと読める。
ハッカズークとは
株式会社ハッカズークは2017年設立、アルムナイ(企業の退職者・卒業生)に特化した事業を展開する企業だ。中核はアルムナイ・コミュニティを企業が運営するためのクラウドサービス『オフィシャル・アルムナイ』で、ほかにアルムナイ特化メディア『アルムナビ』、採用業務代行(RPO)、人事・採用領域のコンサルティングを手がける。2022年にはHIRAC FUNDらから総額1.4億円を調達している。日本で『アルムナイ・リレーション』という言葉を市場に定着させてきた、この領域の先行プレイヤーの一社だ。
何が起きたか
ハッカズークは、企業・大学の有志アルムナイコミュニティが開く交流会を、最大10組まで無償で開催代行するキャンペーンを発表した(2026年12月18日までに開催されるイベントが対象)。
支援内容は幅広い。最大30名収容の会場とケータリングの無償提供に加え、LinkedInを使った案内代行を含む企画・集客サポート、そして受付・司会進行・写真撮影まで含む当日の運営サポートまで、同社が引き受ける。幹事が抱えがちな『会場手配や飲食費の立て替え』『集客の難しさ』を丸ごと肩代わりする格好だ。
対象コミュニティの設計には特徴がある。企業アルムナイは製造・メーカー、商社、金融、インフラ・エネルギー、コンサルティング、人材サービス、IT・ソフトウェア、広告・出版、官公庁の9業界。大学アルムナイは『卒業後20年以内(20代〜40代)を中心』とした、国公立・主要私大の卒業生に絞られている。
条件はひとつ。イベント冒頭に、同社の新サービス『オフィシャル・アルムナイ・パートナーズ』を紹介する時間を設けることだ。
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トラキャリの視点:アルムナイは「採用(Buy)」から「業務委託(Borrow)」へ
無償化の背景を理解するカギは、この『冒頭で紹介する時間』という条件にある。ここで案内される新事業こそ、同社の商流が広がりつつあることを示している。
ハッカズークが2026年5月に正式提供を開始した『オフィシャル・アルムナイ・パートナーズ』は、アルムナイの専門性を"他社の業務委託人材"として循環させるサービスだ。同社はこれを、企業が抱える課題解決に外部の知見を『Borrow(借りる)』形と説明している。第一弾のパートナーには、エーザイ、オリエントコーポレーション、りそなホールディングスといった大手が名を連ねる。
ここに、無償キャンペーンの狙いが浮かび上がる。従来のアルムナイ活用は、退職者を再び自社で雇う『出戻り採用(Buy)』が中心だった。企業とシステム契約を結べば成立するモデルだ。一方、業務委託の仲介では、企業と契約するだけでは足りない。実際に手を動かせる元社員本人——つまり供給側の人材にリーチできるかどうかが成否を分ける。
その視点で見ると、今回のキャンペーンは供給側の母集団づくりと読める。対象を9業界・卒業後20年以内の現役世代に絞る設計は、業務委託の担い手になりうる専門人材の選別に近い。無償で運営を引き受けるのは善意というより、大企業出身の専門人材が集まる場そのものへの接点を確保する投資、と捉えるほうが構造を説明しやすい。交流会は、Borrowモデルの入り口になっている。
採用支援を主戦場としてきたHR系プレイヤーが、人を『採る』だけでなく『貸し借りする』チャネルを持ち始めた——今回の一手は、アルムナイという領域が単なる採用手法から、外部戦力の循環インフラへ広がりつつあることを示す一例だ。
深掘り:拡大するアルムナイ市場と、用途の広がり
背景には、アルムナイ活用そのものの急拡大がある。矢野経済研究所の調査によると、リファラル採用・アルムナイ採用支援サービスの市場規模は2022年度の18億5,000万円から、2023年度30億円、2024年度は50億7,000万円(見込)と、2年で約2.7倍に伸びている。人手不足を背景に、退職者との関係を資産として捉える企業が増えていることの表れだ。
同調査では、アルムナイ採用の実施経験がある企業は38.8%(2024年10〜11月調査)。『転職=裏切り』とみなす空気が薄れ、辞めた人材と関係を保つ動きは着実に広がっている。
これまでこの市場は、退職者を『再雇用する』という採用の文脈で語られることが多かった。今回のハッカズークの動きが示すのは、その先だ。再雇用というフルタイムの受け皿だけでなく、専門性を必要なぶんだけ外部から借りる——業務委託という『雇わない活用』へと、アルムナイの使いみちが広がりつつある。市場の伸びが採用に限らず"活用の多様化"へ向かうなら、HR領域の競争軸も『採る力』から『つなぎ続ける力』へと移っていく可能性がある。
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