
VTuber市場1,050億円に対して、カバーが「3.3兆円市場」と「123兆円市場」を視野に入れた戦略の全貌
2025年、エンタメ×デジタル市場は「推し活消費」の拡大と、IPの多角展開を求められる構造変化が進んでいます。今、この市場に対し、独自の成長モデルで応えているのがカバー株式会社です。
最新決算では売上高434億円と急成長を続け、同社は今、VTuberを起点にライブ・グッズ・ゲーム・メタバースを束ねる“IPプラットフォーム化”を本格化させる重要なフェーズにあります。
事業に資するHR人材を志向する方に向けて、成長産業、成長企業の実態に迫ります。
“推し活経済”を土台に、IP企業からクリエイター経済圏のプラットフォーマーへ
カバー株式会社は、「芸能事務所」から脱皮しつつある転換期にあります。
2025年3月期の売上高は434億円、3年間のCAGRは約47%、営業利益は80億円(営業利益率18%)に達しています。
その背景には、総工費約27億円を投じたモーションキャプチャースタジオ、テクニカルアーティストやエンジニアを抱えた制作体制、自社メタバース「ホロアース」やTCG、ゲームといった周辺事業への本格参入があります。
同社は、2030年3月期に売上高1,000億円、営業利益250億円以上という中期目標を掲げ、5年間で累計500億円規模の成長投資・M&A枠を設定しています。
「推し活経済」を足場にしながら、IP企業から“クリエイター経済圏のプラットフォーマー”を目指していることが、今注目すべき理由です。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
売上4年で3.2倍、営業利益率18%の“高収益VTuber企業”
カバーは2016年創業のバーチャルエンターテインメント企業で、「ホロライブプロダクション」を中心としたVTuberプロダクション事業を展開しています。
事業は大きく4つの収益源に分かれます。
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配信/コンテンツ(スーパーチャットやメンバーシップなど)
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ライブ/イベント
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マーチャンダイジング(フィジカル・デジタルグッズ、TCG含む)
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ライセンス/タイアップ(IPライセンス、広告タイアップ、ゲームなど)
2025年3月期の売上構成は、マーチャンダイジング47%、配信22%、ライブ18%、ライセンス13%です。かつて投げ銭比率が高かったVTuberビジネスが、グッズやライセンスを中心としたIPビジネスへとシフトしていることが分かります。
売上高は2022年3月期136億円→2023年204億円→2024年302億円→2025年434億円と、4年で約3.2倍です。
同期間、営業利益も18.5億円→34.2億円→55.4億円→80.0億円と伸びており、「成長と利益」を両立しているエンタメ企業です。
プロダクションとしてのスケールも特徴的で所属VTuberは89名、YouTubeのチャンネル登録者数は合計9,715万人、そのうち登録者100万人超のタレントが44名にのぼります。
女性配信者の総視聴時間ランキングでは、世界TOP5のうち4名を同社タレントが占めるデータもあります。
海外売上も2023年3月期約45億円→2025年3月期約101億円へと拡大し、海外比率は着実に高まっています。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
1,050億円のVTuber市場の先に広がる、アニメ3.3兆・コンテンツ123兆円のTAM
一般的には「VTuber市場=YouTuber市場の一部」と見られていますが、カバーが向き合う市場はその枠を大きく超えています。
矢野経済研究所によれば2024年度のVTuber市場は約1,050億円。
一方で日本アニメ産業は3.3兆円、世界のコンテンツ市場は約123.6兆円と桁が違います。カバーはVTuberを“アニメ・キャラクターIPの一形態”と捉えつつ、最終的にはグローバルコンテンツ市場へ拡張する構想を掲げ、三層的なTAMを前提に事業を展開しています。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
市場成長を支える要因は三つあります。
①アニメ・ゲーム文化のグローバル化
北米・アジアを中心に日本発コンテンツの受容性が高まり、2Dキャラクターのファンコミュニティが拡大しています。
②デジタルネイティブ世代の「推し活」行動
Z世代・α世代は、2次元/3次元の境界を意識せず、日々の配信に継続的にコミットします。ホロライブの平均月間UUは2,792万人、年間動画供給本数は約12万本と、圧倒的な接触頻度を生み出しています。
③UGCを前提とした拡散構造
二次創作ガイドラインの整備により、切り抜き動画やファンゲームの収益化が可能で、公式MV1本からTikTokで3億再生、YouTubeで4,000本以上のUGCが生まれた事例もあります。
こうした構造の中で、カバーの競合はVTuber事務所に限りません。
ユーザーの可処分時間・可処分所得の観点では、キャラクターIP、スマホゲーム、K-POP、スポーツ観戦など、あらゆるエンタメが代替手段となります。カバーは、日々の配信とUGCを通じて“熱量を長期維持できるコミュニティ”という独自のポジションを築こうとしています。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
配信を起点にグッズ・ライブ・ゲーム・メタバースへ伸びる三層の収益モデル
カバーの事業は一見タレントマネジメントのように見えますが、実際にはVTuber IPを中心に多領域へ展開するプラットフォーム型モデルです。基点となるのはYouTubeでの配信で、雑談・歌枠・ゲーム実況などが日常的なタッチポイントとして機能し続けています。
2025年3月期には平均月間UU約2,800万、累積動画は11.9万本に達し、継続的なコンテンツ供給がファン基盤を支えています。
ライブ:国内外へ広がる動員の拡大
こうした日次接点を土台に事業は三方向へ広がっています。まずライブ領域では、年間公演数が10本から15本へ、動員数は34万人から52万人へ増加しました。武道館・有明アリーナといった国内会場に加え、北米やインドネシアでも公演を実施し、リアルとオンラインを組み合わせた回収モデルが形成されています。
コマース:最大の収益源へ成長したグッズとTCG
グッズ・TCGを中心としたコマース領域は現在の最大収益源で、公式TCG「hololive OFFICIAL CARD GAME」は累計出荷数が270万点から400万点へ拡大しました。ECに加え、TSUTAYAやドン・キホーテなど小売店にも展開が進み、ブランド接点はオンライン外へも広がっています。
タイアップ:IPを外部体験へ広げる接続点
タイアップ・ライセンス領域では、外食・飲料・スポーツ・ゲームなど幅広い企業とのコラボが進んでいます。ドジャースや台湾味全ドラゴンズとのコラボ試合、渋谷・池袋・有明でのポップアップイベントなどがIPの認知を拡大しており、共同開発ゲームの中には四半期1億円超を生むタイトルも現れています。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
既存事業が広がる一方で、カバーは別軸の成長領域としてデジタルコンテンツにも投資しています。インディーゲームブランド「holoIndie」ではホロライブIPを活用したゲームが22本リリースされ、ファンが“創り手”として参加できる土壌が整いつつあります。
さらにメタバース「ホロアース」では、アバター・スタンプ販売やタレントと交流できる「降臨祭」などが実装され、配信やライブとは異なる新たなファン体験が立ち上がっています。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
これは三本柱で築いたファン基盤を前提に、IPの経済圏を“どこまで拡張できるか”を追求する取り組みと言えます。
これらの事業を貫くのが、配信・コマース・プラットフォームの三層構造です。
日々の配信がファンを獲得し、グッズやライブが熱量を収益化し、ライセンス・ゲーム・メタバースがIPを外部へ拡張する構造により限界利益率は約43%と高く、単一事業に依存しない強固なビジネスモデルが成立しています。
27億円スタジオとUGC・ホロアースが築く、模倣困難なクリエイター経済圏
カバーの競合優位は、「人気タレントが多い」だけではなく、具体的なアセットは三つに整理できます。
①制作インフラとしてのスタジオと技術力
総工費約27億円をかけた新スタジオはテニスコート6面分に相当する広さを持ち、数十人規模の同時3D収録を可能にするモーションキャプチャー設備を備えています。
これにより、全編3Dライブや大型バラエティ番組を高頻度で制作でき、表現技術の研究開発も継続的に行える体制です。
表現技術の研究開発費は「先行投資的支出」として2026年3月期に数十億円規模を計上する計画で、継続投資の意思が示されています。
②UGCと二次創作を前提としたマーケティングエコシステム
カバーは早期から二次創作ガイドラインを整備し、切り抜き動画やファンゲームに対しても一定条件下で収益化を認めてきました。
holoIndieやマーケットプレイスを通じて、ファンがつくるゲームやアバターアイテムに収益機会を提供している点も特徴です。
公式MV1本から数万本単位のUGCが生まれ、TikTokやYouTubeで未視聴層へ拡散される構造ができています。
③「ホロアース」を起点とした自社経済圏構想
現在はアバターカスタマイズやアイテム販売が中心ですが、今後はバーチャルライブやミート&グリート機能、トラッキングモードなどを実装し、「推しと同じ空間で過ごす」常設の体験を目指しています。
ここにTCGやゲーム、グッズを連携させることで、YouTubeなど外部プラットフォームに依存しない自社メタバース内のマネタイズ機会を増やす構想です。
こうしたアセットを背景に、同社は2030年3月期までの5年間で累計500億円の成長投資・M&A枠を確保しています。
対象は「海外事業開発」「制作・プロデュース機能強化」「生産・物流最適化」「デジタルコンテンツ関連事業」「経営基盤強化」などに広がっており、IP単体ではなくクリエイター経済圏全体への投資が明示されています。
VTuber市場がTAM1,000億円規模にとどまるとしても、アニメ・ゲーム・TCG・メタバース・スポーツといった隣接市場との接続次第で、カバーの収益ポテンシャルはその何倍にもなり得ます。
同社の中期計画は、その前提に立った「プラットフォーム化」戦略と読み取れます。

(出典:カバー 事業計画及び成長に関する事項 )
679名体制の“エンタメ×テック混成組織”が成長を支える
カバーの組織の特徴は、エンタメ企業でありながらテック企業並みの職種構成を持つ点です。
本記事はAIによるリサーチ/作成を活用しつつ、当編集部にて事実確認・加筆修正を行ったものです。ただし内容の正確性を担保するものではなく、一部に不足や誤りが含まれる可能性があります。そのため、ご指摘を頂き次第、内容は随時アップデートしてまいります。
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