
AI面接と候補者体験——採用の論点が『入れるか』から『どう伝えるか』へ
AI面接を経験した人のうち、企業への志望度が『上がった』と答えた人が77.8%にのぼった。導入企業に『冷たい』印象を持った人は3.3%にとどまる。「AI面接は候補者体験を損なう」という採用現場の懸念に、一つのデータが示唆を投げかけている。
出典一覧
- ラグザス株式会社『HUGAN』プレスリリース「AI面接経験者の約8割『企業への志望度が上がった』、AI面接導入企業に『効率的』『先進的』の声」(PR TIMES、2026年8月19日)
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)ビジネス・レーバー・トレンド 2026年1・2月号(AI面接の企業事例)
この記事の要点
- AI面接経験者では、志望度が『上がった』77.8%に対し『下がった』は8.9%で、体験がネガティブに振れた人はむしろ少数
- 候補者が導入企業に抱いた印象のトップは『効率的』36.7%。効率化は企業側のメリットとされがちだが、候補者側もそれを評価している
- ただし調査は経験者90名限定で、AI面接を受け入れた層に偏る。論点は『入れるか否か』から『どう説明し、面接後をどう繋ぐか』へ移りつつある
HUGANとは
今回の調査を実施したのは、20〜30代の若手・ポテンシャル層を対象にしたスカウト型転職サービス『HUGAN(ヒューガン)』。運営は株式会社ヒューガンで、大阪に本社を置くラグザス株式会社の子会社にあたる。2024年7月にサービスを開始し、未経験からのキャリアチェンジや初めての転職を支援する領域を主戦場としている。若手採用の当事者に近い立場から、AI面接をめぐる候補者側の受け止めを調べたのが本調査だ。
何が起きたか
ラグザス株式会社は2026年8月、AI面接を受けた経験がある男女90名(男性61名・女性29名)を対象にしたインターネット調査の結果を公表した。
軸になる数字は、AI面接を経ての企業への志望度の変化だ。『上がった』が77.8%(大きく上がった26.7%+少し上がった51.1%)に対し、『下がった』は8.9%。第一印象を『良かった』とした人も84.4%を占めた。
導入企業への印象(複数回答)は『効率的』36.7%、『先進的』27.8%、『合理的』22.2%が上位に並ぶ。一方で『冷たい』は3.3%、『応募者を大切にしていない』も3.3%と、ネガティブな受け止めは合計しても6.6%にとどまった。
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トラキャリの視点:AI面接の論点は『導入の是非』から『伝え方』へ
AI面接はふつう、「一次面接の工数をどれだけ削れるか」という企業側のコスト指標で導入の可否が語られる。その裏返しとして、「機械的な選考は候補者体験を損なう」という懸念が導入の足かせになってきた。今回のデータは、その懸念が少なくとも経験者の間では想定ほど強くないことを示している。ネガティブな印象は6.6%、志望度が下がった人も1割未満だった。
ただし、この数字をそのまま「AI面接は候補者体験を高める」と読むのは危うい。調査対象はAI面接の経験者90名に限られる。AI面接を提示された時点で辞退した人や、そもそもそうした企業を避けた層はこの90名に入っていない。つまり回答者は、AI面接をある程度受け入れた層に偏っている可能性が高い。サンプル数も少なく、母集団を代表する調査として扱うには慎重さがいる。
それでも読み取れる論点はある。候補者が導入企業に抱いた印象のトップが『効率的』(36.7%)だった点だ。効率化はふだん「採用担当者の負担が減る」という企業側の便益として語られる。だが候補者もまた、選考の速さや手間の少なさを企業の印象として評価している。待たされない・段取りが良いという選考体験は、候補者にとっての価値でもある——効率化と候補者体験は必ずしも対立しない、という読みが立つ。
ここから採用現場の論点は動く。「AI面接を入れるか入れないか」という二択ではなく、「なぜ導入したのかをどう説明し、AI面接のあとの人による選考へどう繋ぐか」へと軸足が移りつつある。リリース自体も、導入するだけで候補者体験が自動的に上がるわけではない、と釘を刺している。ツールの有無ではなく、設計と運用が候補者の受け止めを分ける。この構図は、AI活用が採用ブランディングの論点になっていく流れを映している。
背景:AI面接導入の広がり
AI面接をめぐる議論が「候補者体験」に及ぶこと自体、導入が一定の広がりを見せている裏返しだ。人手不足を背景に、大手企業でも新卒採用の一次面接にAI面接を組み込む動きが進み、面接工数の削減や評価軸の標準化を狙いとした事例が公的機関の調査でも取り上げられている(参考:労働政策研究・研修機構〈JILPT〉ビジネス・レーバー・トレンド 2026年1・2月号)。
導入が広がるほど、「使うかどうか」より「どう使うか」が差になる。評価の公平性・透明性の確保、候補者への目的説明、AI面接後の人によるフォローといった運用設計が、候補者体験と採用ブランドの両面から問われていく。今回の調査は、その問いが実際に候補者側でも意識され始めていることを示す一つのデータと言える。
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